プリクラ

 屋根がついてる繁華街。


 ラーメン屋さん、紳士服、ドラッグストア。

 よく見るようなお店が並んでいる。


 どこも入り口は狭い。

 だから、お店はたくさん並ぶことが出来ている。


 中に入ると、お店の奥行きが広くなっていて。

 普通の店舗と変わらないくらいの広さはちゃんと確保されている。

 店によっては、二階建てとか三階建てになっていたりして、どのお店も意外と中は充実しているのだ。


 なので、この通りには人が多い。


 おじいちゃん、おばあちゃんもいるけど、外国の人も多くて。

 ガタイの良い人とかもいっぱい。


 そういう人達が少し怖いっておもって。

 私は一人では通らないようにしている。


 そんな中に、ゲームセンターがあるのだ。


 テレビとかでは見たことあるけど、私は一切入ったことが無い。

 絶対怖いもん。


 今日は、なぎさに連れて来られてしょうがなく来た。


 あ。背が高くてガタイの良い外国の人……。


 思わず私は渚の手を握ってしまう。

 怖い怖い。


「はは。なんで手なんて繋いでくるの? ‌暑いじゃん。美弥子みやこの手ペタペタしてるし」


 ‌そう言われても私は手を離さなかった。


 渚が良い子なのは知ってるんだよ。

 けど、部活引退した後すぐに金髪に染めて。

 こういうお店にも来るようになったんだよ。


 興味ないわけじゃないから着いてきたんだけど……。

 やっぱり怖いな……。



 渚はギャルっぽいメイク。

 高校生になる準備かな?


 こういう風にした方がモテるんだよねきっと。

 私も真似してみようかな。


「なになに。美弥子。じろじろ見ないでよ。私、つけま取れてたりする?」


「いや、大丈夫。メイク参考にしようかなって思って」


「ちょっと、恥ずかしいら、見ないで。近い……」


 なんか照れてる顔、可愛いな。

 渚は姿が変わっても渚だな。


「ふふふ。可愛い」


「……ばか」



 あった。目指してたゲームセンターだ。


「ここ、ここー!」


 渚は私の手を引っ張って入っていく。


 あぁ。緊張する。


「じゃじゃーん! ‌これこれ! ‌肌の色がとっても白く見えるんだよ。一緒に撮ろう」



 これがいわゆるプリクラってやつか……。

 私は田舎者ってわけじゃないんだよ。

 ここ、都会だし。


 都会過ぎて、逆にこういうところ来れないっていうか。

 怖い人が多すぎるっていうか。

 私が浮かない顔を見せていたらしく、渚は明るく誘導してくれた。


「ほらほら。難しいことなんて考えずに!」


 プリクラ筐体のカーテンの中に入ると、中はとっても明るかった。

 ……ライト眩しすぎる。



 渚が機械を操作して進めてくれる。

 えっと、どう映るんだろう私。

 写真なんて、なかなか撮らないし。

 けど、こういうのやってみたかった。


 そんなことを考えてると、画面が変わって私と渚が映し出された。


「はは。美弥子、瞬き多い!」



 渚の笑った顔、可愛いな……。

 私もそんな風に笑いたいな……。


「ポーズはこう! ‌ハートだよ!」


 渚が右手を差し出して来る。

 私は左手。


「ふふ。可愛いでしょ。二人で作るハート」


 なんか、急に緊張しちゃうな……。


「顔寄せて、寄せてー」


 3、2、1。

 ‌パシャ。


 私、ちゃんと笑えたかな……。

 可愛くとれたかな……?


「可愛いかは、二の次だよ!」


 そう言って笑いかけてくれる渚。

 またカウントダウンが始まってる。



「失敗したら何回だって取ればいいし、また来ればいいし! ‌初プリ、楽しもー! ‌ねっ!」


 画面越しに、可愛い笑顔を向けてくれた。


 私は、渚のそんな顔が好き。

 そう思ったら、自然と笑顔になっていた。



「それそれ、自然な笑顔。それが可愛いんだよ、美弥子は」



 パシャ。


 二人きりの空間で。

 向かい合うと恥ずかしいけど、画面越しになら顔がちゃんと見れる。

 可愛い笑顔。


 渚と撮るプリクラ。

 また何回でも撮りたいな。


 ……好き。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る