レースゲーム

 昔のレトロRPG。


 ターン制っていうのが良いんだよね。

 相手が行動した後は、必ずこっちに順番が回って来て。

 順番を守るっていいよね。



 よし、私のターン!

 私の全力を食らわせてやる!


 ドーーーン!


 当時の大迫力魔法。

 今見ると簡単なグラフィックだけど、そこが良い。


 懐かしいなー。

 魔法のモーションが終わったが、敵はまだ生きていた。


 ……あれ?

 ダメージ食らってるよね?

 全然倒せないんだけど。


 うわっ……。

 エグいダメージ……。


 やっぱり強いなー。

 このゲームの中ボスというだけはありますね。



 次の手はどうしようかな。

 うーんと。

 このキャラクターは回復をして、こっちは補助魔法かけとこう。



 ゆっくり考え直して……。

 このゆったり時間が流れる感じが好きなんだよね。



 これで、どうだ!



 ……あれ、やられちゃった。

 主人公パーティがやられてしまい、画面が暗くなった。



 テレビ画面に反射して、後ろにいる甥っ子のひとし君の顔が見える。

 仁君が画面越しに喋りかけてきた。



ひろ姉ちゃん、よわっ!」


 今日は家でお留守番をしていてと言われてる。

 この生意気な甥っ子、仁君が遊びに来ているからだ。


 仁君に見せる目的もあって、久々にレトロゲーム機を取り出して遊んでいるのだ。



 楽しんでいるところを見せてたのに。

 ちょっと生意気ね……。



「仁君? RPGにはね、強いも弱いも、上手いも下手も無いのよ?」



 仁君は、眉をしかめてる。

 納得しないようなので、続けて私のゲーム論を教えてあげる。


「これはね、作戦ミスっていうやつ。もう少しレベルを上げるべきだったの」



 仁君は顔の横に手を持っていき、やれやれといったジェスチャーをしている。


「言い訳は良いよ。姉ちゃん弱いの分かったから」



 私……。安い挑発に乗るんじゃない……。


 仁君は顎を出して、目は上の方を向いて、変顔を決めている。



 ‌……この。

 ……挑発に乗ってあげようじゃない。



「わかったわ仁君。違うゲームで遊んであげようじゃない。勝負よ!」



 引き出しの中を漁って一本のゲームを取り出した。


「じゃじゃーん。どうだ! マロオカートよ!」

「なにそれ」


「私の得意なゲームよ。これであなたをにやっつけてやるんだから」

「宏姉ちゃん、ってなあに?」



 あれ……? ジェネレーションギャップというやつかしら……。


 私は高校二年、この子は小学五年。

 6歳差しかないはずなのに。



 ……まじか。ちょっとへこむな。

 ……いいや。気を取り直して。


「これはね、レースをするのよ。コースを5周して早くゴールした方が勝ち。ほらほら、こんなキャラクターとかがいてね。お姉ちゃんが面白さを教えてあげるよ?」

「いや、いい。俺こっちのゲームするし」


「……負けるのが怖いんでしょ?」

「は? ‌そんなんじゃねえし。それやっても俺勝つし」


「じゃあやってみましょ?」


 仁君にコントローラーを渡した。



 ゲームを起動すると、懐かしい音が流れてくる。

 それじゃあ、キャラクターを選んでと。


 手加減無しなんだから!



 ◇



「えーー姉ちゃん早いーー! もう一回!」


「ははは。私の勝ちー!」


 仁君の悔しがる顔が見えた。

 大人げなくない。私はまだ子供だもん!


 私は、小さい頃からレースゲームが好きだったのだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る