シャボン玉デート
ふわふわと飛ぶシャボン玉。
風は無いので遠くへは流されずに、近くでふわふわと浮かんでいる。
湿度の高い気候だからか、あまり高くは上がらずにふわふわ。
吹き出されるシャボン玉は、小さいのがいっぱい。
大きいシャボン玉は作れないのかな……。
前の砂場デートもだけど、今度はいきなりシャボン玉を吹きたいって言い出して。
100円ショップに寄って、シャボン玉を買ってきて、まさに今吹いている。
優希君、外見は抜群にいいんだよ。
なんだろうな。
中身がもっと大人にならないかな……。
「ふーーっ!」
吹き出されるシャボン玉は相変わらず小さいのがいっぱい出てくる。
「……優希君、せっかくならもうちょっと大きいのを出してよ。さっきから小さいのばっかりだよ」
優希君は少し困った顔をした。
「大きいのって難しいんだよねー……」
先程までよりももっと大きく吸い込んで、緑色の吹き棒を力いっぱい吹いてみせる。
液だけが飛び散って、シャボン玉すら出てこなかった。
「……優希君、シャボン玉下手すぎない?」
「それなら
ピンク色の容器に入ったシャボン玉液と、吹き棒を突き出された。
さすがに今のよりかは吹けるでしょって思って受け取った。
吹き棒をシャボン玉液につけて。
私の動作を隅々まで優希君が見てくる。
興味津々な目でずっと凝視。
なんか、ちょっとプレッシャーだな……。
優希君の顔、すぐ私の隣まで来てるし……。
優しく吹けば、さすがに小さいシャボン玉くらいは出るよね。
何も難しいことは無いはず……。
緊張する気持ちを抑えて、大きく吸い込んで息を止める。
そして、優しく吹き棒に口を当てようとした。
……大きいシャボン玉を。
「吹き口って僕は咥えちゃうんだけど、美緒も咥える派? そっとキスするみたいに触れるだけ?」
チラッと横目で優希君を見ると、真剣な顔を向けてきていた。
……確かに咥えてたね優希君。
って、もしかして、これ私が口をつけたら間接……。
優しくゆっくり吹いていこうと思って肺に集めた空気が、一気に漏れ出てしまった。
「ぶはっ……」
まだ吹き棒に口をつける前だったが、私が吹き出した息は吹き棒を通って小さいシャボン玉が少しでた。
それ同時に私の情けない声も出てしまった。
「馬鹿じゃないの! 何言ってるのよ! これはそういうのじゃ……」
言い訳をしようと優希君の方を向く。
少し屈んで、私をみあげる姿勢の優希君。
綺麗な瞳が私を見つめ返してくる。
ちょっとドキッとして、一歩退いてしまった。
「美緒も上手く吹けないじゃん。シャボン玉ってやっぱり難しいね」
優希君は私からシャボン玉液と吹き棒を取った。
また吹いてみているが、相変わらずシャボン玉は小さいものばかり。
さっきまでは吹いてなかった風が少し吹き始めて、シャボン玉はふわふわと空に広がっていった。
太陽の光に照らされて、キラキラして綺麗だった。
こっちを見て、「綺麗!」って言って優希君が笑ってる。
何も考えてない無邪気な感じ。
……さっき、気にせず吹いちゃえば良かったか……。
はしゃぐ優希君は楽しそうで。
なんだか、私も楽しい気分になる。
シャボン玉デートっていうのも好きかもしれない。
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