ランニング
少し湿った空気。
朝の日差しは、昼間よりも少し柔らかく感じる。
それが肌にそっと降り注ぐ。
空を見上げると、雲はほとんど無かった。
明るく澄み渡った青空。
今日は思いっきり晴れそうだなー。
そんな景色を見ていたらUVケアをしてないことに気がついた。
一旦家の中へと戻る。
早朝の日差しでも気をつけないとね。
念のためのUVケアは、毎日怠ってないんだ。
優しい日差しでも、間違って私の肌をイジメちゃわないように。
右手、左手、顔。
鼻の頭、おでこ、顎先、頬。
ぬりぬりーっと、満遍なく延ばしていく。
よし。これで準備万端かな?
再度家のドアを開けて外へ出る。
山鳩がほほーと声を上げて。
鳥もさえずっているのが聞こえる。
カエルもゲーゲー鳴いてる。
早朝だと人通りも車通りも少ないから自然の音がよく聞こえるんだ。
朝って、やっぱりいいよね。
最近、私は朝のランニングをするようになった。
夏も近づいてきて、プールの授業があるっていうのにお腹のお肉が……。ね。
溶けかけのソフトクリームみたい。
コーンからはみ出すようなお肉。
そんな例えを誰かに言われたくなくて。
今のままだと、さっちゃんに絶対言われるんだよ。
……それだけは避けたい。
パピコみたいなクビレは無くても、アイスキャンデーみたいにただただ真っ直ぐなボディが欲しい。
いかんいかん……。アイスから頭を離さないと。
けど、早朝ランニング終わったらご褒美にアイスの実を1つくらい……。
あれは、果物と一緒。実だもんね……。
つべこべ考えず、走るか!
◇
うちの近くには田んぼがあって、畦道が続いてる。
遠くの山のふもとまで田んぼが続いてるように見える。
それが朝日に照らされて、水面がキラキラと輝いている。
どこか、魔法の国に来たみたい。
そんな道を私はゆっくりと走る。
横からカエルの大合唱を浴びながら。
そういう賑やかな歓声も悪くないよ。
頑張れ頑張れって言ってくれてるんだよね?
カエルさん。
ゲーゲーゲーゲー。
……うんうん。
盛り上がりすぎてるね。
私ゆっくり走ってるだけだよ?
そんなことを思っていると、前から誰かが走ってくるのが見えた。
こんな早い時間に誰だろ。
だんだん近づいて来たら顔が見えた。
ハーフパンツに、足先まで黒いランニングウェア姿。
上半身もスポーティなシャツに、腕の先まで黒いウェアを着てる。
「お?
……私の格好がラフなTシャツと短パン姿だから散歩に思われたのか。
これってランニングなんですよ一応……。
そう思いながら、否定するのも面倒でコクっと頷いた。
「冗談だよ。ランニングしてるんだろ? 健康的でいいね!」
慎太郎君は爽やかな笑顔をくれた。
「頑張れよ! 食事制限して変に痩せてるよりも、ランニングしてる方が健康的でいいと思うぜ!」
そう言って走り去っていった。
私はシャツの中に手を入れて、お腹の肉を触る。
健康的か……。
もうしばらくの間、ランニング続けてみようかな。
痩せるんじゃなくて、健康的な体を目指して。
水面はキラキラと輝いていた。
吹き抜ける風は、少し湿り気を帯びていて気持ちがいい。
……慎太郎君に言われなくてもランニング続けてたもん。
ランニングするって、やっぱり気持良くて好き。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます