茶道部
今の時間は何時だような……?
教室の真ん中。
黒板の上に付けてある時計を見る。
もう16時か……。
冬だったら日が暮れ始めてもおかしくない時間なのに、今の季節だとまだ明るい。
教室の窓から見える風景。
まだ夕焼けに染まる前の明るい空と、校庭。
昨日まで降っていた雨が嘘みたい。
今日は夏のような雲をしている。
梅雨はまだ明けてないんだけどなー。
運動部は今日も練習に励んでいる。
校庭のサッカーコートで走ってるサッカー部。
赤いゼッケンと、黄色いゼッケンで試合してるのかな。
赤いゼッケンの子が走って走って……。
ボールに追いついた。
それでシュート。
おお、キーパーの人、シュート止めた。
熱い試合!
どっちも頑張れ!
野球部のグランドの方も練習してるなー。
フライでも取ってるのかな。
外野がやたら叫んでいる声が聞こえる。
球は小さいから、私には見えないけど……。
おっ?
獲れたかな?
外野の人たちが自分のポジションに戻ってく。
取れたんだね!
うん。次も頑張れ。
小さく両手を握って応援。
「オーーー! ファイオ、ファイオー」
この声はバスケ部かな?
校舎の周りを走ってるのが見える。
今日は体育館が使えないのかな。
地道な走り込みも大事だよね!
声出し良い感じだよ!
うちの高校のバスケ部はチャラくなくて、みんな坊主。
そこも結構好感持てるんだよね。
ファイトー!
「すごいねぇ。どの部活も頑張ってるねぇ」
窓際から畳へと戻って。
着物の裾を正しながら、正座をした。
片手じゃ持てない大きな器。
それを両手で持って、お茶をすすった。
ずずずー。
お茶の味を噛みしめながら、目をつぶると音楽が聞こえてくる。
どこかの教室で吹奏楽部が練習しているのだろう。
公立高校に防音室なんてものは無いもんね。
文化部も、各部活の練習するのが分かる。
みんな、それぞれに頑張ってるんだよなぁ。
目を開けて、器を畳の床に置く。
器の中には緑色の泡だけが残っている。
そこから目線をゆっくり上げていくと、赤い着物の
私は、お茶でまったりした気持ちのまま、微笑みかける。
「どの部活も精が出ますねぇ……」
美香も微笑みながら答えてくれる。
「
美香が上品に諭してくる。
私が置いた器を両手で受け取り、新しくお茶を入れようとしている。
美香は所作の一つ一つが綺麗だな……。
「他の部活が頑張っているのを、しみじみ感じていたのでございます」
私も言葉だけは、綺麗に。
美春はやれやれといった顔をしながら、すっと茶菓子を差し出してきた。
まるで私を餌付けでもするように。
嬉しくなり、美香に合わせて上品に振る舞う。
受け取る時は、片手で着物の裾を持ちながら。
「結構なお手前でございます」
茶菓子を丁寧にとって見せると、美香は楽しそうに笑ってくれた。
梅雨の合間の晴れた日に。
今日も優雅に茶菓子を食べる。
美香と食べる茶菓子は格別に美味しい。
茶道部に入って良かったよ。
私、茶道部好きだよ。
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