カーテンを開けたら雨の世界
閉められた白いカーテン。
薄くて軽い素材でできてる。
私だって軽々開け閉めできちゃうカーテン。
けど、全然光は通さなくって、外が全く見えない。
外の世界が隠されちゃってる。
私たちの方が隠されちゃってるのかな?
雨降ってるからって、閉めなくても良いのにねー。
幼稚園の窓は、とっても大きい。
天井から窓になっていて、開けたら園庭に出られるんだ。
それが今日は窓も閉められていて、カーテンまで閉められちゃってる。
外に出れなくても、カーテンは開いてて欲しいなー。
雨降ってても、外の景色は見たい。
雨の景色って、綺麗で好きなんだよね。
そう思って、白いカーテンを眺めてぼんやり。
教室の中は、いつも通りがやがやしてる。
外の世界も、雨の音でがやがやしているように聞こえる。
――ガラガラ。
教室のドアが開いて、先生が教室に入ってきた。
「みなさん揃いましたかー? 朝の挨拶をしましょう」
騒いでいたみんなも自分の席に戻って、先生の方を見た。
みんなが席に着くのを確認してから、先生が号令をかける。
「みなさん、おはようございます!」
「先生おはようございます! みなさん、おはようございます!」
声をそろえて、ゆっくりと挨拶をする。
みんなが一斉に声を上げるので、とっても大きい声。
それを聞いて、先生はニコッと微笑んで答えてくれる。
「みんな元気で良いですね!」
先生の笑顔って、可愛い。
私もニコニコして眺めていた。
ふと、私の隣にいる凛太朗君がいないことに気が付いた。
先生に教えてあげようと、私は声を上げる。
「先生! 凛太朗君がいません!」
「あら。本当だ。
……褒められた。嬉しい。
「休みの連絡はもらっていないんだけどな。他に休みの子はいないみたいだし……。ちょっと凛太朗君のこと確認してきます」
そう言って、先生は教室から出て行ってしまった。
先生がいなくなると、またみんなはがやがやし始めた。
私は、先生がいる静かな時間の方が好きだな……。
私だけでも静かに待っておこう。
開かない白いカーテンでも眺めておこう。
――コンコン。
窓を叩く音が聞こえた気がした。
白いカーテンで閉ざされている外の世界。
そこから聞こえる気がする。
……何だろう。見えないって怖い。
――コンコン。
やっぱり外からだ。
どうしよう……。
恐る恐る窓に近づいてみる。
音は止んでる。
気になる……。
カーテンだけでも開けちゃっていいのかな。
どうしようかな。
……よし!
サーッとカーテンを開けると、外の世界は綺麗な雨が降っていた。
薄暗闇に輝く無数の線。
教室のがやがやした音が消えるみたい。
静かな世界が広がっている。
……あれ、誰もいない?
そう思ったら、窓枠の端の方から凛太朗君が走ってきた。
カバンも持ってる。
幼稚園に来るのが遅れちゃったんだ、きっと。
私は、窓も開けてあげる。
「ありがとう! 遅れちゃった」
そう言って凛太朗君は教室に入ってきた。
これで、みんな揃った。
凛太朗君が入った後、窓は閉めたけどカーテンは開けたままにした。
全員そろって、より一層がやがやとした教室。
私は、窓の外を眺める。
雨の日の窓の外。
静かな世界。
しとしと降ってて、綺麗で好き。
やっぱり、カーテンは開いてる方が好きだな。
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