水族館デート

 晴れてよかった!

 先週梅雨入り宣言されてたけど、今日は雲一つない快晴。

 真夏日になるなんて、天気予報で言っていた。

 窓の外は、夏の日差しそのもの。

 光量子束密度が高すぎて、光の渋滞が起きちゃってる!

 明るすぎる!



 今日は日差し強いから、麦わら帽子なんて被って行こうかな?

 鏡の前で、肩くらいまである髪をときながら、思いついた。


 試しに、麦わら帽子を被ってみる。

 麦わら帽子の頭の部分には、黒色のリボンが巻かれていて。

 ちょっとおしゃれなレースのリボン。

 それが、ちょうどいいアクセントになってる。


 うん! 可愛い!


 今日の服装は、お気に入りの水色のワンピース。

 それに、白いカーディガンを合わせて。


 ほっぺに人差し指を当てて、ニコッとしながらポーズを取る。

 うんうん。


 手を胸元に畳んで、くるっと一回転。

 ワンピースの裾がふわっと浮く。


 鏡に向き合うところまで回ったら、またポーズ。

 よし! 可愛い!


 丸い小さなポシェットを肩から下げて。


「お母さん、いってきまーす!」



 ◇



 今日は、彼氏と水族館デート。

 今日で2回目のデートなんだ。

 最初は映画館に行って、ドキドキハラハラだった。

 ポップコーンがのどを通らなかったもん。

 食いしん坊の私にしては衝撃的な状況だったんだよね。


 今日は、私の希望で水族館にしてもらった。

 ドキドキもいいけど、のんびり過ごしたいよね。

 例えドキドキするにしても、穏やかにドキドキしたいな。


 お互い家は遠いから、水族館で直接待ち合わせ。

 時間より少し前に二人でついていた。

 彼は、さわやかな青いシャツ姿だった。



「水族館デートにぴったりな恰好だね、合格!」


 背伸びして、彼の頭によしよしする。

 そしたら、ちょっとハニカんでくれた。


 それで、二人で手をつないで水族館へと入った。



 早速、目の前に大きな水槽。

 空調も効いていて、涼しい館内ということもあったけど、暑い日に水を眺めているというのが、とっても気持ち良かった。


 水槽の上から日の光が入ってきて、水槽の中は光のカーテンができているみたい。

 水がキラキラと綺麗に光っている。


 泳いでいる魚もゆったり。


 水の音が聞こえるわけじゃないけど、ぶくぶくーって聞こえそう。



「おさかなさん、気持ちよさそうだね」


 手をつないでる彼は、ニコって答えてくれる。


 歩いていくと、屋外へ出る展示スペースがあった。

 屋外でも水槽が右左に見えて、魚が泳いでいる。


 すると、前方の方から飼育員さんとペンギンが列になって歩いてきた。


 ペンギンはよちよち歩いてる。



「可愛いー!」


 思わず彼の手をぎゅって握ってしまった。

 それに反応して、彼はぎゅって握り返してくれる。



 反応してくれるのが、ちょっと嬉しい。



 ペンギンは飼育員さんだけ見つめて、よちよちと一生懸命歩いてく。


「可愛いね、ペンギンさん。歩いてるだけでも、楽しそう」


 手を少し開いてペンギンさんの真似をすると、彼はにこやかに答えてくれる。


裕子ゆうこの方がペンギンよりも楽しそうだし、……可愛いよ」


 ……なにそれ。

 ……そんなこと言わないじゃんいつも。


 私は、ちょっぴり恥ずかしくなって麦わら帽子を深く被った。


 繋いでいた彼の手をギュッと握った。

 彼も、ギュッと答えてくれた。



 水族館デート、最高です。

 水族館デート、好きです。

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