ワイヤレスイヤホン
お父さんから「誕生日プレゼントだよ」って言われて、小さな包みを渡された。
お父さんちょっとケチだし、あまり期待してなかったけど、ちゃんと用意しててくれたんだ。
その事に少し嬉しくなった。
プレゼントは片手に収まるくらいの小さい包み。それが少し気になった。
大きなつづらと小さなつづらの話じゃないけど、ちょっと期待しちゃうじゃん。
小さいほうが良い物が入っているって。
この大きさは、アクセなのかな?
けど、お父さんはそんなセンス無いだろうし。
そんなことを思って、包みを開けると小さい箱が出てきた。
白い色の小箱。
……この色、そしてロゴ。
まさかと思って開けると、ワイヤレスイヤホンが入っていた。
白くて光沢があって。
とても光って見えた。
「これ! ずっと欲しかったよ! ありがとう!」
自分がガサツだっていうのは認めたくないけど、良くイヤホンを壊しちゃう。
使い終わったらそのまま靴の中に入れちゃって、気づくと絡んじゃってて。
鞄の中から取り出そうとして引っ張るじゃないですか?
そしたらぶちって。そんなことが何回も。
その度にお母さんに怒られながら買ってもらってて。
流石に壊しすぎちゃって、最終的には「自分のバイト代から出せー」って言われて。
そんなお金もったいないからって、100円のイヤホンを使ってはダメにしてを繰り返していた。
「マジ嬉しい! お父さん、神!!」
私の反応に、お父さんも嬉しそうだった。
「無くすんじゃないぞ?」
うんっと頷いて、早速音楽を聴いてみようと蓋を開けて取り出してみた。
「けど、これってどうやって使うんだ? ……ブルートゥースっていうの? なにこれ?」
ちょっと苦笑いしながらも、お父さんが私と携帯を使って設定をしてくれた。
私の携帯って、そんな機能があったんだ。
何から何までお父さんがやってくれた。
すっごく嬉しい。
「これで聞けるはずだよ」
お父さんから携帯とイヤホンを手渡された。
白いワイヤレスイヤホン。
ドキドキしながら両手に持って。
おそるおそる耳穴に近づけると、するっとハマった。
カナル型っていうのかな?
耳にすっぽり。
かといって、今まで使っていた安物とは全然違う付け心地。
それじゃあ、音楽を聴いてみよう。
携帯を操作して、いつも聞いてるプレイリストを流した。
流れてくる音楽はいつもと同じはずなんだけど、今までと全然音が違う。
まるでイヤホンをしてないみたい。
クリアな音が直接脳内に聞こえてくるみたい。
なにこれ。
「すごいよ、お父さん!」
「……………」
あれ? お父さん、口をパクパクして何か言っているようだけど、何も聞こえない……。
なにこれ。すごい。
イヤホンから聞こえてくる音量は小さいのに……。
私は一度イヤホンを取った。
そして、お父さんにあらためて伝えた。
「すごいよ、これ!!!」
お父さんは、うんうんと頷いた。
「喜んでもらえたようで良かったよ。これからも、楽しい学校生活を送るんだぞ!」
そう言って、お父さんは優しく微笑んでくれた。
「はいっ!」
私も笑顔で答えた。
これは、私の宝物。
ワイヤレスイヤホン、好き!
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