水色

 外は、雨がしとしとと降っている。


 毎日、傘と長靴。

 今週はずーーーっと降ってる。


 せっかく運動会の練習頑張ったのに。

 中止になって欲しくないなー。


 雨の中、一人小学校へ向かった。



 ◇


 図工の時間。

 授業の最初に先生が作るものを発表してくれる。


「今日は予定を変更して、みんなで『てるてる坊主』を作りましょう!」

「なにそれー?」


 クラスの男子が手をあげて聞いている。

 てるてる坊主を知らない人もいるんだ?



 そんな男子に先生は説明してくれた。

「晴れになるように願いを込めて作る『お守り』みたいなものかな。明日の運動会が晴れになるように、みんなで作って教室の窓に飾りましょう!」


 ……そっか! みんなで作れば晴れるはずだよね!


 先生は、教卓の上に色のついたティッシュを並べ始めた。

 てるてる坊主って、白いティッシュで作るのが普通って言ってたけど。

 先生がせっかくなら賑やかにしたいって、いっぱい色を用意してくれた。

 材料もティッシュだけじゃなくて、折り紙や透明なビニール袋、色付きセロハンなんていうのも用意してくれた。



 自由に取って行って自分の席で作る。

 私もまずは材料を取りに行った。


 どれにしようかな。

 いっぱい材料があると迷うな……。

 うーん……。


 私、水色が好きなんだよね。


 そう思って水色のティッシュに手を伸ばそうとすると、先に違う手が1枚取っていった。


「水色って、良いよね!」


 正行まさゆき君がそういって、笑顔を向けてきた。

 水色のような、澄んだ瞳が綺麗だった。



「正行、水色って雨の色みたいじゃんか。それでてるてる坊主作って晴れるのかよ? 赤色にしようぜ! 太陽の色だよ!」



 ……そうか。良く考えれば、そうかもしれない。

 ……私も水色が好きだけど、雨の色か。

 ……晴れなきゃだもんね。


 そう思って、私は赤のティッシュに手を伸ばそうとすると、正行君は私の手を掴んで止めた。



「この色は、『青空』の色だよ!」



 友達の方を向いて、爽やかな声でそう言った。


「雲一つない青空の色! 晴れの日っぽいだろ?」


 その発言に、友達も納得したようだった。

「なるほどな。なら、赤色の太陽と一緒に飾ろうぜ! これで晴れ間違え無し!」



 私も一緒になって納得してしまった。

 正行君、良いこと言うなぁ……。

 掴まれている手をそっと払おうとすると、正行君は私の方を向いて言ってくれた。


「自分の好きな色を変える必要なんてないよ。見方次第だよ。良いところはきっとあるよ!」



 そう言われて、私も水色を取った。


 私の好きな色。

 青色だけど、青色よりも澄んでいて。

 青色よりも薄いから力無さそうに見えるけど、それは優しいってこと。


 冷たいって言われそうに見えるけど、 いっつもそばにいてくれる『青空』と一緒の色。


 正行君は友達と笑いながらてるてる坊主を作っていた。



 私もこの色でてるてる坊主を作ろう。


 明日天気にしておくれ。

 私の好きな水色。

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