植物

 今日の授業は、外へ出て生き物を観察する校外学習らしいのです。


 持ち物は、帽子と水筒。

 今日は暑くなるからって、水筒には氷たっぷりの麦茶を入れてもらったのです。

 お母さん、ありがとう。



 みんな揃って朝の会をする。

 席に着いた状態で、帽子をかぶって水筒を持ってと準備をした。

 黒板の前にいる先生も、つばの広い帽子をかぶって準備完了といった装いをしている。

 みんなの準備が終わるのを見計らって、先生が優しく呼びかけるように話し始めた。



「みなさん、外は暑いのでこまめに水分補給をしてくださいね」

「「はーい!」」



「今から配る『たんけんボード』に観察帳を挟んで、見つけた植物や生き物をいっぱい描いてください」


 先生が教卓置いてあった大量のたんけんボードを列毎に配り始めた。


「先生、何描いてもいいの?」


 私の前の席、お調子者の晴喜はるき君が早速手をあげながら質問してる。

 先生も配っている最中で見えないと思うんだけど、質問するときは律儀に手をあげるんだよね、晴喜君。



「いいですよー。いっぱい描いて観察帳をにぎやかにしてください!」

「よっしゃー! いっぱい描こうっと!」



 晴喜君の後ろの席の私は、A4の用紙が挟まるくらいの大きさの『たんけんボード』を晴喜君から渡された。


「なんでも描いてもいいんだって!」


 たんけんボードは、黄色い色をしていて可愛いなって思った。

 私もいっぱい描こうっと。



 ◇



 小学校の近くにある公園へとやってきた。



「みなさん、公園から出ない範囲で自由に探検してみてください!」

「「はーい!」」



 公園は、ボール遊びができるような砂利の広場が真ん中にあって、奥の方に滑り台とブランコがある。

 さすがに砂利に生き物はいないだろうから、公園の周りにある木とか花とかを描いたら良いのかな?

 そんなことを考えていると、男子たちは一目散に広場を走って公園の奥へと向かっていった。


 私は、公園の周りをゆっくりと歩いてみる。

 植物はいろんなところに生えてるんだなー。木もいっぱいあるし、描いておこう。


 立ち止まって木を描いていると、後ろから先生が声をかけてきた。



芽生めいちゃんは木を描いてるんですね。そうしたら、これは何の木かわかりますか?」


「えーーっと……。……わからないです。……先生、難しいよ。木って全部同じに見えるよ」



 私が戸惑っていると、晴喜君がこちらに気づいて近づいてきた。

 他の男子とは違って、公園の手前の方からじっくりと植物を観察しているらしい。


「これは、桜の木ですよね、先生!」



 ……桜の木? 緑色の葉っぱばかりなのに、これが桜なの?


「晴喜君、正解です。良く分かりましたね」


「この木、春に桜の花が咲いてるのを見てたからね!」



 先生はうんうんと満足そうにうなずいていた。


 すごいな……晴喜君。


 そんなことを思っていたら、晴喜君はこちらを見て声をかけてくれた。

「いっぱい探して、観察帳いっぱいにしようぜ!」


 ニコっと笑う晴喜君の顔は、木漏れ日に照らされて輝いて見えた。


 植物の先生だな、晴喜君。

 私は「うん」っていって晴喜君の後をついていった。


 植物のこと、もっと知りたいな。

 私も、植物好きだもん。

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