ピーマン

 小学校の校舎の前には、花壇があって背の高い樹木が生えている。

 その樹木の前には、白い植木鉢が一列にずらっと並んでいるのだ。

 植木鉢の淵には、それぞれビニールテープがつけられており、学年と組と名前が書かれている。


 一人に一つの植木鉢が与えられていて、学年ごとにビニールテープの色が違うようだ。

 黄色のビニールテープには朝顔。

 赤色のビニールテープにはチューリップ。


 学年ごとにビニールテープの色が異なっており、育てる植物も違っている。



 三年生の色は、緑色。

 今年育てるのは、ピーマンなんだって。

 今からちょうど植えるところ。



 一人一人、自分の植木鉢の前に立って先生から苗をもらっている。

 苗をもらった子は、嬉しそうに自分の鉢に植えていってる。


 先生が私のところまで来た。

「どうぞ、莉子りこちゃん」


「ありがとうございます。あ、先生、これ花咲いてるよ!」


 先生から受け取ったピーマンの苗には、既に白い花が咲いているのが見えた。

 小さくて可愛い花が、少し下向きに咲いている。


「莉子ちゃん、当たりだね。可愛いピーマン、大事に育ててね」


「はい!」


 植木鉢には、予め苗が入るように穴を掘っていた。

 ピーマンの苗をひっくり返して、ポットからゆっくりと取り出す。

 下を向いていた花と、目が合う。


「ピーマンさん、大きい実をつけてね!」


 植木鉢に空いた穴に入れて、土をかぶせた。

 水をあげて、これで完了。



 全員が植え終わったようで、先生がみんなに声をかける。

「皆さん、上手くできましたか? 今日からピーマンを育てます。なので、今日の宿題は、ピーマンについて調べてきて下さい」


 全員で元気良く答えた。

「「はーい」」



 ◇



 学校から帰ると、早速ママに言ってiPadを貸してもらった。

「今日ね、ピーマンを植えたんだよ。それでね、ピーマンを調べるっていう宿題もらったの」


「へぇー、頑張って育てなね。ピーマンって美味しいから!」


 iPadに入力する。

『ピーマン 種類』


 すぐに検索結果が返ってくる。

 iPadさんは頭がいいなー。


 1番上に表示されてるサイトを指で押すと、すぐにページが表示される。

 ピーマンの図鑑のサイトのようで、いろんな種類のピーマンの画像が載っていた。


 おおぉー。ピーマンっていっぱい種類があるんだ。

『パプリカ』って聞いたことあるな。

 赤、黄、橙。


 ホワイトピーマン、ブラックなんていうのもあるんだ。

 いろんな色があって、見てるだけで楽しいなー。


 形も色々あるんだ?

 細長いのとか、小さいのとか、丸いのとかもある。

 可愛いなー。


 私からiPadを奪われて、手持ち無沙汰にしていたママがiPadを覗き込んできた。


「莉子が植えたのは、どれかな? ママは、美味しそうなこれがいいなー」

 ‌そう言って、にこにこな顔をこちらに向けてきた。


「私は、可愛いこっちだと思うよ。お花が可愛かったもん」


 私が指さしたピーマンを、にこにことママも見てくれる。

 私のピーマンには、どんな実がつくのかな。楽しみだな。




 ‌ぐー……。



 ‌お腹の音が鳴った。


 ‌……私じゃないよ? ‌ママのお腹の音。



「お腹空いたね。……そうだ、今日の夕飯はピーマンにしよう! こんなに見てたら食べたくなってきちゃった」


「お母さんは食いしん坊だなぁ。いいよ、私もピーマン大好き!」

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