駄菓子屋さん
小学校の帰り道
通学路からは外れたところに古い駄菓子屋がある。
私と
車一台が通れるくらいの狭い道を歩いて、そこからさらに細い横道にそれるとひっそりと駄菓子屋が建っている。
店の裏には小さな公園がある。
公園に生い茂る大きな樹木によって、店は日影の中にすっぽりと入る形になっている。
屋根の上から木漏れ日が降り注いでおり、そよ風が吹くと木漏れ日が揺れる。
とても幻想的なたたずまいをしている。
軒先には漫画雑誌が並べられていて、ドアが開け放された店の入り口部分だけが通路のようにスペースができている。
大きな樹木のせいで店の奥は暗く見えて、どこまで先があるのかがわからない。
まるで宝が眠っている同窟のような、そんな雰囲気を感じる。
今日もワクワクしながら店に入ると、薄暗い店の中からおばあちゃんが声をかけてくれる。
「いらっしゃい。今日も元気そうだね」
「こんにちは、おばあちゃんも元気そうだね!」
おばあちゃんは私たちが来ると、ニコニコと対応してくれる。優しいおばあちゃんだ。
おばあちゃんに見守られながら駄菓子を選ぶ。
さて、今日は何を買おうかな。
駄菓子は、値段ごとに棚に並べられている。
店の手前の方から奥に向かって値段が高くなっている。
レジの手前にカップメンのようなお菓子がいつも気になってる。
あの辺りは50円もして、なかなか手が出ない。
私みたいにお小遣いが少ない子なんかには、少しためらってしまう。
唐突に珠樹ちゃんが叫んだ。
「私は、今日は当たり付きに賭けよう!」
当たり付きのお菓子。当たるといくらかお金が返ってくるのだ。
うーん。私はそんな甘い話よりも、甘いお菓子の方が良いなぁ。
そうだ! 今日は、五円チョコにしよう。
五円で買える幸せだよね。
「ああー、外れちゃったかー。お菓子は食べれるし、楽しんだから良いよね」
珠樹ちゃんは外れたようで、悔しがってると入口に人影があった。
落ち込んだと思った珠樹ちゃんがケロッと元気になって話しかける。
「あれ?
翔平君って、いつもブランド物の服を着てる、あの翔平君……?
こんな駄菓子屋さんに来るんだ……?
「おばあちゃん、こんにちは!」
「いらっしゃい。好きなの買っていきなー」
翔平君の事だから、きっと奥の方の高い駄菓子でも食べるのかな……?
私には食べられないあの駄菓子たち……。
羨ましいなー……。
そう思ってると、翔平君は私の隣に来て棚から五円チョコを取った。
「幸せは値段じゃないよ! 僕もこれ好きなんだ、美味しいよね!」
私は、「うん」と頷いて答えた。
おばあちゃんもニコニコと笑ってくれている。
誰でも平等に楽しめる空間。
私は、この駄菓子屋さんが好きだ。
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