占い

 午前7時前。

 朝の慌ただしい時間。


 高校に行く準備をしながらテレビを眺めていると、今日の星座占いがやっていた。

 テレビの音量が小さかったので、少しテレビに近寄って行って確認する。



 ――今日の運勢No1は、ふたご座のあなた!

 ――意中の人が振り向いてくれるかも!

 ――ラッキーカラーはピンク!



 私の運勢、今日一位だ。

 ふむふむ。

 ピンク色か。

 髪ゴムはピンク色にしようかな……。


 満足しながら振り返ると、妹がこちらを見ていた。

 じろりと半開きな目で、テレビの前にいる私を邪魔そうにしている。



「お姉ちゃん、そんなの信じてるの?」

「い、いいでしょ! 私の運勢が良いからって、ひがまないでよね!」


 文句を言う妹の前をそそくさと通り過ぎて、洗面所へと向かう。

 洗面台の前の鏡を見ながら、左右偏りが無いように、髪を結う。


 ピンク色。

 うん、良い色!

 今日の私も可愛いぞっ!



 ◇



 いつもより少し早めに学校に着いた。

 運勢が良かったからか、駅からのバスに上手く乗り継ぎができたのだ。

 良い一日の始まりだ。



 教室で自席へ着いて、友達と朝の会話を楽しむ時間もたっぷりあった。

 最近の朝の話し相手は、千代ちよちゃん。

 何でも知ってて、尊敬しちゃう。



「今日の星座占いで、私の星座が一位だったんだよ。なのに、妹から子供扱いされてね。『テレビの占いなんて信じてるのー』って」


 私がそう伝えると、千代ちゃんもわかると言うようにうんうんと頷いてくれる。


「妹さんの言うことも一理あるとは思うよ。占星術も難しくってね、大勢に向けての占いはなかなか当たりにくいんだよね。プラスで誕生日の運勢とかもとか見るのも重要だったり」


「なるほどね。千代ちゃんはいつも参考になるなぁ」



 そんな話をしていると、悠斗ゆうと君が登校してきた。

 私の憧れの人。

 今日もカッコいいなぁ……。



 鞄には、普段見ないようなストラップがついてる。

 ピンク色の可愛いキャラクター。


 ああいうのが 好きだったりするんだ……。

 珍しいなーって眺めていると、悠斗君の男友達も気になっていたようだった。



「お前、これ好きだったんだ。なんか可愛いなこれ」

「たまたまだよ。今日の占いで『ピンク』がラッキーカラーって出てたから」



 あれ? 悠斗君って、私と一緒の星座なのかな……?



「あの占いか、ふたご座が一位だったよな。って、あれ? お前の星座違くない?」

「……これは、俺が気になってるやつのラッキーカラー。そいつがラッキーになってもらえればなって」



 へぇ……、悠斗君の好きな人ってふたご座なんだ。

 悠斗君に想われてる子が羨ましいなぁ……。


 そんな姿を眺めていると、悠斗君はふとこちらを向いたので目が合った。

 ニコって微笑みかけると、慌てて視線を外された。



「お前彼女いないじゃん、誰なんだよそれ」

「うっせーな。秘密だよ。……誕生日知ってるやつなんて、そいつくらいだし。いつも占いの話してるから覚えちゃったんだよ……」



 ……あれ、いつも占いの話って。



「妹にバカにされても、占い信じちゃうようなやつ。そんな素直な奴、幸せになって欲しいなって」

「なんだそれ。そんなやついるのか?」



 悠斗君は頬を赤らめながら、チラッとこちらを横目で見てきた。

 今度は、私が目を逸らしてしまった。


 なんだか恥ずかしくなって、目線を戻せず意味もなく窓の外を見る。

 梅雨に入ったというのに、雨が上がって晴れてるんだ……。


 ……ピンク色で、彼が振り向いてくれた。

 ‌……占いって、やっぱり当たるよ。

 妹に言ってやろう。

 今日の運勢は最高だよ。


 ‌悠斗くんの方を向くと、お互いの目がちゃんとあった。

 ‌多分、今の私の顔はピンク色してる。



 ‌……えへへ。

 だから、占いって好き。

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