コインランドリー
私の家から車で10分。
大型の洗濯乾燥機があるコインランドリーがある。
テレビでCMもやっているようなコインランドリーで、最近うちの近くにもできたのだ。
CMの歌は、頭に残る。
マキマキのサブロー。
5月。初夏の陽気が気持ちいいと思ってたのも束の間。
『夏日』を通り越して『真夏日』にもなる日も出てきた。
そんな気候なので、さすがに冬物は押し入れにしまおうと、母が決心したのだ。
冬コート。春コート。セーター。
こたつ布団なんて言うのも、一切合切持ってきた。
ゴミ袋に使う大きなビニール袋に洗濯物を詰め込んできた。
合計して6つほど。後部座席を占領している。
さすがにこれは、洗いきれるのだろうか……。
母はやることがいつも極端なのだ。
少しずつやっていけばいいものを……。
「いっぺんにやった方が、楽だし安いのよ?」
もっともらしい理由を父に言い聞かせていて、父も納得していた。
「ママは賢いね! やりくり上手!」
父の丸め込み方も上手。
……というか、単純すぎるのよね。
そんな両親から産まれて、私も気を付けないといけないな……。
コインランドリーへ向かう車内では、母が陽気に歌っている。
「ふとん、ふとん、サブロー!」
「……お母さん、その歌頭に残るからやめて」
母は、少しニヤッと口角を上げると、口を閉じて鼻歌に切り替えた。
「ふふん、ふふん、ふふふー!」
……もういいや。
何が楽しいのやら。
陽気な母の鼻声を何回かリピートしたところで、コインランドリーへと着いた。
近くて良かったと本気で思う。
「じゃあ、まずは大きい物から洗いましょう!
そう言われたので、こたつ布団をもってコインランドリーへと入る。
初めて来たのだが、入り口は思ったよりも広い。
布団を抱えても余裕で入ってこれたし。
真ん中に大きい机があるので、一旦置かせてもらった。
周りを見ると、洗濯乾燥機が20台程あった。
それぞれ番号が付いている。
後から、掛け布団を持った母が来る。
どうやら前が見えないようだ。
「美紀、空いてるところ案内してー」
空いてるところ……。
3番が空いている。
と、その洗濯乾燥機の横に男の子がいるのが見えた。
「
思わず声が出てしまった。
大翔君も私に気づいたようで、こちらへと近づいてきた。
「美紀も布団洗濯か? 手伝い偉いな」
「大翔君は一人で来たの?」
「そうなんだよ、母さんが車出してくれなくってさ。しょうがないから家から歩いて布団持ってきて。終わるまで、ここにいなきゃいけないんだよ」
「そうなんだ。それなら私も一緒に待ってようかな」
私がそう言うと、大翔君は嬉しそうに微笑んでくれた。
「そしたら、洗濯機の使い方教えてあげるよ。洗濯物を入れたら、あっちにあるタッチパネルを使うんだ」
「そんなシステムなんだ! 最新だねー!」
……そうだ。せっかく大翔君に会えたので、母はどこかへ行ってもらう。
「お母さん、後は私一人でも大丈夫だよ! もう子供じゃないからね!」
そういって母から布団を取ると、母は嬉しそうな顔をしていた。
「成長したわね、ありがとう! 美紀に任せちゃう!」
私は、母を丸め込むのが上手いかもしれない。
母は、車へと戻っていった。
「ふふん、ふふん、ふふふー」
「どうしたんだよ美紀、鼻歌なんか歌って。あっ! それ、マキマキのサブローのCMじゃん!」
「ふふ、正解!」
私は母に似ているのかもしれない。
コインランドリーって、楽しいな。
私、コインランドリーが好き!
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