リニューアル
片側二車線ある国道。
今日はママと車でお出かけ。
街中へ近づくと、大手チェーン店が道路の前の方に見えてくる。
ガストーン。
丸亀製めーん。
ジョリーパスターン。
地方都市でも、大手チェーン店は一通りそろっている。
どこにでもありそうな光景。
この光景で、どこの地方だか当てるのは難しいと思う。
GW明けの休日。
中学校1年生から使い続けていた筆箱が壊れてしまった。
ファスナーで開けるタイプなのだが、チャックが開かなくなってしまったのだ。
仕方なく筆箱の端っこを切って中身を取り出した。
ずっと使い続けてたものを自らの手で壊すって、とても切なかった。
私の落ち込んでいる様子に、ママは慰めの言葉をかけてくれる。
「元気出しなよ! あの筆箱は1年間の寿命だったんだよ。限界を1ヶ月も超えて鈴子に使ってもらって、幸せだったと思うよ」
13ヶ月か……。長かったな。
なんて、未練たらたらはやめよう。
新しい物に目を向けないとね。
端が切られた筆箱と、新しい筆箱を見比べる。
古い方はお疲れ様だ。
車の中のゴミ箱へと入れてしまう。
「気分落ち込んでる時は、お寿司にしよう!」
ママが 明るく話しかけてくれる。
その言葉通り、チェーン店が並ぶ中で、『はま寿司ーん』の駐車場へと入っていく。
「ここのお店って、最近リニューアルしたんだって。楽しみね!」
広い駐車場に車を停め、店の方へと向かう。
店の方を見ても、外見は何も変わってないようだった。
そのまま歩いて中へ入っても、内装もパッと見は変わってないように見える。
二重に仕切られた扉から更に中に入ると、初めてみるマシンがあった。
コンビニにあるATMのような大きさ。
画面はそれよりも、もっと大きい感じで。
気になってマシンに近づくと、マシンが喋りかけてきた。
「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」
びっくり。
機械声じゃない、いい声。
「あら、イケメンボイス。2名です」
ママが答えると、マシンから紙が出てきた。
コンビニの印刷機のような早さで、サーっと出てくる。
最新マシンなのだろう。
これは凄い。
「出てきました番号の席へどうぞ」
スムーズな対応にママはニッコリとしている。
「この子、いいわね。うちにも欲しい」
機嫌の良くなったママと、マシンに促されるまま番号の席へと向かう。
変わったのはマシンだけだったのか、席は前と変わらないようだった。
「早速食べましょ!」
そう言っても、寿司は流れてこないようだった。
「ママ、完全注文制って書いてあるよ、変わったみたいだよ」
「そうなの? じゃあ注文しましょ」
注文パネルを使って注文を入れる。
ネギトロ軍艦。
私のお気に入り。
すぐ注文した。
回転寿司レーンに乗って、それこそ軍艦のようにゆっくりと近づいて来るんだよね。
そのワクワク感が堪らないんだよね。
そう思っていたら、直ぐにパネルが鳴った。
「ご注文の品が参ります」
鳴るの早いな。さすがリニューアル。
来て来て。
早く食べたいな。
そうしたら、ゆっくり流れてくると思ったネギトロ軍艦は、凄まじい速さで流れてきた。
ETCが付いてても反応しないんじゃないかっていう速度。
「速!!」
寿司が来るのを目で追っていたママ。
眉間に力が入って、こちらを見てくる。
そんなママのリアクションが面白かった。
「すぐ食べれていいね! リニューアルって楽しいね」
「そうね。ママは何食べようかな? 新しいメニューなんて言うのもあるわね」
私とママはニコニコして、次々に注文していった。
古いままもいいけど、リニューアルっていうのも楽しくて、好き。
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