掃除当番

 教室の後ろには、ランドセルをしまう棚がある。

 そこに並んで、掃除道具を入れているロッカーがある。


 ほうき、ちりとり、モップ、バケツが入っているロッカー。

 掃除の時間までは、ひっそりと存在感を消して待っている。

 そんな奥ゆかしい掃除道具たち。

 私は、とても大事な『学校の仲間』だと思っている。



 給食を食べ終わると、昼休み前に掃除をすることになっている。

 これは、週ごとの当番制だ。

 給食当番と、掃除当番がそれぞれ交代していく。

 今週私は、掃除当番。


 私は、給食当番よりも、掃除当番の方が好き。

 すぐに終わらせちゃえば、先に昼休みに入れちゃうんだ。



「ごちそうさまでした」

 教室中の生徒で食後の挨拶済ませると、私はすぐに席を立って掃除ロッカーまで駆けていった。

 そんな私の様子を先生は見ていたようで、教卓からみんなに向かって言ってくれる。


三波みなみさん、えらいですね! 一番に掃除を始めてくれてますよ」


 教室中のみんなの視線が私に集まる。

 キラキラした目で、私のことを「すごい」と言って見てくる。


 ……私はただ、昼休みを早く過ごしたいだけなんだけど……。

 ……けど、褒められるって、なんか嬉しい。



 先生の言葉をきっかけにして、他の友達もすぐに掃除ロッカーに集まってきて、掃除道具を取っていく。

 みんなで協力して早く終わらせれば、すぐに休み時間になる。

 先生、私に気付いてくれてありがとう。

 駆けつけてくれたみんなもありがとう。


 自分から掃除をしようとするみんなは、生き生きとやる気に満ちた顔をしている。

 そんな顔を見ると、自然と口元が緩んでしまう。


 ちょっとカッコ悪いので、緩んだ口元を引き締めなおして、みんなに言う。


「みんな、今日も掃除がんばろう!」

「がんばろう!」


 各々、好きな掃除道具を取っていく。

 男子も女子も、みんな次々と取っていく。

 その中に、ちょっとイケメンのさとし君も混じっていた。


「三波はえらいな。自分からできるってカッコいいよ!」

 爽やかな笑顔で、さらっと褒めてくれた。

 聡君とあまり喋ったことないけど、近くで見る笑顔、カッコいいな……。


「……うん。一緒にがんばろう!」


 私の返事に、聡君は白い歯を見せて爽やかスマイルをもう一度くれた。


「すぐ終わらせちゃって、校庭で一緒に遊ぼうぜ!」


 サムズアップして、教室の前の方から掃除を始めた。

 それぞれみんなが協力して、掃除を進めている。


 私もがんばらないと!

 早く終わらせて、聡君といっぱい遊ほう!


 自分からやるって気分が良い。


 私は、掃除当番がとっても好き。

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