サンドイッチ
「安いからって、お母さん買いすぎ。それも食パンばっかり」
朝起きてリビングへと行くと、レンジの上に食パンの袋が8袋も置いてあった。
6枚切り、8枚切りが4袋ずつ。
賞味期限が見えるように綺麗に並べて置いてある。
お店の棚がそのままレンジの上に来たような雰囲気である。
「レンジの上に乗り切る量だから、大丈夫よ」
母は、悪びれもせずににこりと笑った。
うちの家族には、よくわからない理論がある。
レンジの上に乗り切る分であれば、賞味期限内に食べきれる。
そういって、その時買いたいものを大量に買ってくるのだ。
母は、毎年春になると『パン祭り』といいながら、食パンばかりを買ってくる。
いろんなパンがあるのにも関わらず。
これじゃあ、『食パン祭り』だよ。まったく。
「どうするのよ、こんなに。……また毎食、食パンになるわけ?」
「大丈夫。お母さんが美味しいサンドイッチ作ってあげるから! 今年も食パンのレシピをいっぱい考えてあるんだからね!」
母は買い物こそ上手くないが、料理は上手であった。
母の作る食事は何でも美味しく、特に創作サンドイッチはとても美味しい。
独自に作る『卵ペースト』だったり、フルーツを挟んだりするのも去年は作っていた
どれもお店で売り出しても結構売れるくらいのクオリティをしている。
だけど、美味しくても毎食はさすがに飽きてくる。
「
「お弁当まで食パン……なの……?」
私が怪訝そうに言うと、母は少したじろいでしまった。
「好きでしょ? お母さんの食パン? 毎年美味しいって……」
母は少し悲しそうな声で言うが、ここで引き下がってしまったらまた調子に乗ってしまう。
ここは、ちょっときつめに言うしかない。
「さすがに毎食はやりすぎじゃないかな、お昼はお弁当買って食べるよ」
母は悲しそうな顔をして、今にも泣き出しそうだった。
「……去年、フルーツが美味しかったって言ってたから、イチゴ以外にもフルーツ沢山買ってきたのに……」
母は、ちょうどお弁当を作っていたのであろう。
台所には、大量に作られたホイップがあった。
食べやすい大きさに切られた、キウイ。
丸ごと一玉買ったと思われるメロンも置いてあった。
「……わかった。お昼もサンドイッチでお願いします」
そういうと母の顔がパッと明るくなった。
我が母ながら、すごく単純な性格をしている。
「朝ごはんも用意しているから、先に食べておいて」
リビングテーブルには、三角形に切られたサンドイッチが置いてあった。
卵ペースト、ハム、レタスとが挟まれている。
朝ご飯にふさわしい具材だ。
席について一口食べる。
レタスの触感と、程よいハムの塩味が口の中に広がる。
あとから、卵ペーストの甘みがやってくる。
久しぶりに食べたが、やはり母のサンドイッチは美味しかった。
「おかわりもあるから、どんどん食べてね! ちょっと作りすぎちゃった」
母はおどけてお茶目な言い方をする。
「……美味しいから、いっぱい頂戴!」
私は、母の作るサンドイッチが大好きだ。
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