平和のための犠牲
@yuzuki_desuze
平和のための犠牲
7月某日。とある学校にて。
「おし!2年2組!決勝!!勝つぞーー!!」
体育館に主将の声が響き渡りその声に「おー!」と他生徒が応える。
ーそうこの日は。
花木市立第四中学校、全学年参加ドッジボール大会。決勝である。
この決勝の舞台、我らが2年2組の敵は2年3組。
昨月の運動会では勝ちを譲ったが、今回は負けるわけには行かない。
「えー、それでは決勝を始めますぅ。制限時間はぁ、10分。よぉーい!…はじめ。」
校長の少し眠たそうな合図で我らの聖戦が始まった。
キャプテンがじゃんけんに勝ちボールはこちらからとなった。
ボールが空中で右往左往し、相手チームの人数を一人、また一人と減らしていく。
そんな中。
「あれ?樹(いつき)は?拓真(たくま)知ってる?」
数少ない親友の輝(ひかる)にそう訪ねられる。
樹とは、うちのクラスの居眠り魔で、なんだかほわほわしたやつのことである。
「え?樹ならそこに……」
「……ふぇ?」
そんな間抜けな声が聞こえたと同時に、しゃがんで寝ていた樹の肩をボールが掠める。
「って、ぁああ!当たってんじゃねーか!」
「…カウントダウンは、いつから始まっていたの…!?」
「うっせーよ!」
「………ひどい。」
「はいはい当たりましたから、お嬢さんは外野へどーぞー。」
「……お嬢さんじゃないし。」
そういうととぼとぼと樹が外野へ歩いていく。
謎に出オチ感があったがあまり気にしないでおこう。
その後、お風呂に行きたくなるような軽快さでうちのキャプテンが6ヒットを決めた。
観客からは、歓喜の声や悔しがる声があがる。
「こっちはあと三人、向こうはあと二人。…よし、勝ちは見えたな。」
そう言う我らがキャプテン。
向こうの二人は、キャプテンと髪が長めの女子。
こちらはキャプテンと俺と輝だ。
キャプテンの言葉に現状を整理していると、輝が叫んだ。
「キャプテン!!!」
ハッとする彼。
群衆は皆、息を飲む。
輝の咄嗟の言葉に、俺の体は考えるより先に動いていた。
パシッ、っと乾いた音が響き渡り俺の背中に当たったボールが空を舞う。
「拓真!!」
「…っひひ、キャプテンは…守ったから!」
そう言い俺は地面へと落ちる。
ー刹那。
「!?」
「ほら、オレが取った。ボールが地面に落ちてないから、セーフだ。」
「……キャプテン…!」
その瞬間、会場でわっと大きな拍手と歓声が起こった。
表彰台に立ち、お互いに握手をする両キャプテンの姿は圧巻だった。
全てが終わりクラスに帰る途中、皆が急に俺に「お前のお陰で勝てた」「ありがとう」等の言葉を掛ける。
少しむず痒かったが、まんざらでもなかった。
「……え?あれ?もうおわったの…?」
「「いやまだ寝とったんかい!!!」」
平和のための犠牲 @yuzuki_desuze
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