ニューヨーク近代美術館の夜。そこに飾られている絵画の中の二つの作品――ゴッホの「星月夜」とルソーの「眠るジプシー女」が動き出す。正確には、その絵の中の星々や、眠るジプシーを見守るライオンが。名画に詳しくない人でも、楽しめる良作です。柔らかい文章で書かれる瑞々しい描写が印象的で、作品に漂う幻想的な雰囲気も好みです。
ルソーの名画に描かれたライオン。彼はいつも眠っているジプシー女を見守っていますが、少しだけ寂しさを感じています。そんな彼の心の隙間を埋めるように、隣の『星月夜』から煌びやかな誘いが……。少しの冒険を経て、ライオンが自分の居場所を再確認するラストシーンが秀逸です。強面だけど心優しいライオンと、全て分かっていたジプシー女。二人の通わせる言葉がとても優しく、読後感は幸福感に包まれます。「大切な人のそばにいること」の尊さを教えてくれる、珠玉のショートストーリー。