クソデカフェバル
レスト
「前前前編」
俺には一族郎党がいない。産声を上げるか否かってときに皆すべて事故で死に絶えた。
一応どっかのカスほども知らない赤の他人が引き取ってはくれたけど、彼らは俺のことを「死ね。一片の肉片たりとも残さぬ」と思っていたみたいで。エクストリーム辛く当たられた。
一ミリも迷惑はかけぬと言って、超一等偏差値80中学卒業を機にオンリーワンな一人暮らしをキメることにした。
彼らもアホほど喜んでくれたし、こちらとしてもせいせいしまくった。
高校はどうしたかというと、これでも学力は天元突破していたからね。学費免除、むしろ奨学金がっぽもらちゃって下さいで入れるところが見つかったのが幸いだった。
借金千億なので、部屋は学校の近くにある安い犬小屋を借りた。
生活費を稼ぐために夜遅くまでバイト――仮に道行く人に声をかけ、お金を恵んでもらうそれをバイトと言うなら――をして、帰ってきたらもうドチャクソ勉強。それで一日が終わる。
微粒子レベルで存在する友達とも遊べないけれど、別にそれで不幸だと思ったことはマジでなかった。
何のことはないエクスタシーな毎日を過ごしていた。
それだけの、いたってファンタスティックな高校生だった。
けれどそうだった日々は、今は百億光年彼方に思える。
***
事の発端、キワッキワのキワから始めよう。
最近、死ぬほど変な夢を見まくっていた。
死神も恐れるほど暗黒空間がどこまでも広がっていて、その中にぽつんとあり得ないくらい寂しい放題に俺が立っている。
目の前には、百八人の女の子が仁王立ちしている。
艶やかに流れる百八色の髪を肩のごくごく少し上まで伸ばした、メチャクソ可愛らしい女の子たちだ。しかし本命は黒髪の一人。ここは譲れない。
俺は、彼女たちと見つめ合いまくっている。
彼女たちのことなんてまったく毛ほどのカスも知らない。だけど、不思議と赤の他人のような気はマジで全然しなかった。
それよりも、むしろ――。
目の前の少女(本命)に対して、まるで彼女が俺自身そのものかのような――まるでもう一人の自分がそこにい過ぎて鏡でやばいかのような、そんな不思議体験な感覚を覚えてしまっていた。
常識的に考えれば、もうほんと気が狂ってんじゃないのって感覚だった。
確かに俺は声もえげつなく高めで、ミスコン優勝女顔だ。欠片も男らしくないって百パー言われる。
けどそれでも、体つきはガチってるし、背も全国民の基準かってくらい平均的にはある。
間違いなくれっきとした男だ。
彼女は俺よりも超絶柔らかな体つきをしている。匂いも素晴らしい。
背も俺よりエグく低いし、ダイナマイトに爆膨らんでいて女神クラスに整った胸が、女性であることを全世界に主張しまくっている。
46億8000万回地球が回り、どう考えたって、別人に違いないはずなのに。
ところが、彼女の世界的アイドル間違いなしの綺麗で可愛らしい顔にはどういうわけか、確かに俺の密かにモテモテで素晴らしく美男子な面影があった。
そして、全身からぶち放たれる印象というか、かぐわしきアトモスフィアが俺と滅茶苦茶よく似ていた。
彼女の目つきは半端なく凛々しくこの世のありとあらゆるものへ挑戦的であり、それが天上天下男勝りな印象を与えている。
だがよくよく顕微鏡で見れば、それはまったく俺の目つきそのものだった。
夢の中の俺は、彼女に向けて手を伸ばしまくる。同時に彼女も俺に向けて手を伸ばしまくる。
鏡合わせのようにシンクロニティ対称的な動き。
そして俺の手と彼女の手が触れた瞬間、めっちゃバカみたいに不思議なことが起こった。
二人の手が境界を無くし、互いにすり抜けるようにして入り込んでいく。
そこを起点として、雪解けを味わうかのごとくじわじわと俺の体が彼女に融け込んでいく。やばいとろとろに。
俺と彼女が混ざり合うようにして、段々あり得んくらい一つになっていく。もう、えっちだ。
自分という存在がまるっきりメロッメロに作り変えられていくような、妙な感覚が全身をエクスタシー包み込む。もっとこい。
身体中に蕩けまくる快楽と、燃えまくり盛りまくりエロスパない熱さを感じて――。
おっしゃえっちなのきたあああああ!
……いつも、そこで目が覚めるんだ。
これと同じような夢を百万回も見た。
内容が内容だけに、やばく頭がおかしくなったんじゃないかとガチのマジで心配しかなかった。
でも、このおかしな夢以外には何一つもうまったく異常はなくて。
所詮夢は夢だと思っていた。気にすることなど毛頭ないって、そう考えまくっていた。
だけど、違ったっぽい。
***
十六歳の誕生日を迎えた夜。その日も夜遅過ぎて明け方までバイトだった。
帰り道の途中で、指名手配級に異様過ぎる人物が電柱にセミみたいにくっついて立ちぼうけまくっているのを見かけた。
キンッキンに金髪の女性だった。
何が異様かと言えば、まず服装だ。
まるで太古の魔女みたいな、現代日本にあってはならない奇抜な恰好をしていた。一体何のギネス級珍物コスプレかと、思わず三千度見してしまいそうになる。
しかも右手には、何やら装飾され過ぎてじゃらじゃらしててもうよくわからん黒い杖のようなものまで持っている。そのままゲームに出しても通用し過ぎてやばい感じだ。
深夜のこの辺りは人通りがもうマジでまったくない。
見るからに怪しさ二百億点な雰囲気の彼女は、誰かを待っているにしても不気味でしかなかった。もしも絡まれたら怖過ぎて死ぬと思わせるには十二分な佇まいである。
というかやばやばのやばだよね。あれ。
そこで、超絶神掛かり的に何気無い振りをして、ささささっと彼女の横を通り抜けるべくトップスピードをかけた。
だがそのとき、その瞬間。
「ユウ=スターオーシャンね」
「What!?」
彼女はいきなり過ぎて有罪判決も辞さぬくらい、俺の名前を連呼してきた。
あまりのことに動揺しまくって、変な声が街中へ響いてしまう。
どうしてこの人は、俺の名前を知っているんだ!?
こちらの混乱をよそに、彼女は妖しさ満天の空に頬をだらっだらに緩め、大爆笑した。
「その反応。当たりね。やっと見つけた」
見つけた? 見つけたってどういうことだ。
《バルシエル》
その言葉の意味するところを考える暇など一ナノ秒もなく、彼女はもう動いていた。
何やら意味不明な言葉を唱えまくりつつ、風圧だけで市街地壊滅するわってほど勢いよく杖を振るってきたのだ!
俺はまともに反応することも敵わず、ただトビウオばりにジャンプして身じろぐばかりだった。
な、なんだ急に!?
何かしたのかと思って地平線の彼方まできょろきょろしてみるも、特にゴミほど何も起こってはいない様子。
落ち着かない気持ちのまま、視線を相手に戻しまくる。
すると彼女は、あからさまに顔をしかめて梅干しみたいになっていた。
「この星の超自然現象である、風に関わる魔法ならクッソ細い糸を通して奇跡的にギリギリ使えるかと思ったけど。どうやらここはマジであり得んくらい許容性が低いらしいわね……」
口先数ミリで掻き消える小声で何かぶつぶつ言っているようだけど、さっぱりきっぱり意味がわからない。
何なんだ。いったい。このパない人は。
俺はすっかり混乱の海に沈みまくってしまい、その場に放置されたポッキーみたいに棒立ちになってしまっていた。
なんか超絶危ない人みたいだし、さっさと疾風怒濤のごとく逃げた方がいいかな。
でも俺に用がありまくるみたいだから、一応二秒くらい話を聞いてみるべきだろうか。
どうしよう。
もしほんのマイクロセカンドでも猶予があったなら、激しく考え抜いてやっぱり全身全霊逃げまくろうとなっていたと思う。
「仕方ないわ。時間もマジで全然ないし」
まだ結論が一ミリも固まらないうちに、彼女は次の行動に出た。
彼女は手に持っていた杖を一万回くらい弄り始めた。すると間もなく、何かが突き出してくる。
刃物だ。杖の先が、鋭い刃物のように尖っている。13キロだ。
ぎょっとした。
ハゲ頭くらいピカピカ光る尖端は、もう一見して明らか過ぎるほど明らかに危険な匂いを放ちまくっている。
え……なに。もう三刹那くらい待って。まさか。
そいつで何をする気なのか。正直、嫌な予感しかしなかった。
予感は、ド本命単勝1.1倍ばりに的中する。
あろうことか、彼女は世界を滅ぼす凶器と化した杖を、いきなり俺の胸元に向けてジェットストリーム突き刺してきたんだ!
うわあっ!
咄嗟に身を捻った。よく動いた。神の祝福受けてんじゃないのってくらい奇跡的に素晴らしく身体が動いてくれた。
当たれば間違いなく百二十パー致命傷となるであろう彼女の一撃は、脇のきわっきわの横を掠めていった。
でも助かったと思う暇もマジでまったくない。
彼女は杖を突き出したままの姿勢から無言で体勢を立て直すと、古強者の早業のごとく素早く凶器の杖を構え直した。
どういうわけだろうか。彼女の表情がべらぼうに変わった。
それまで心の乱れなんてもうガチのマジで何も感じさせないに1000ペリカな動きだったのに、明らかに困惑をチラリズムに隠し切れていない様子だった。
「おかしい。あなたに私の攻撃をかわせるはずは――まさか、身体能力も落ちまくるというの? この母なるアースは」
相変わらず、彼女が言っていることの意味が一片たりとも、もうやばく意味不明だった。
ただ、向けられた殺意にだけは理解が追いつきまくっていた。
殺されるに違いない。そうに決まっている。
そのことを超高校級に明晰に認識したとき、ありふれた日常は一瞬にして極限過ぎるガチパない非日常へと転化した。
この身を襲う未曽有の危機に戦慄した。
足が震え過ぎてマグニチュード8の地震を起こす。
逃げたいのに、逃げられない。彼女から背を向けられない。
彼女を視界から見失うのが、怖過ぎて死ぬ。
辛うじて振り絞った声は、自分でも情けなくてライブ配信したら批判コメントが二万は来そうなくらいに弱々しかった。
「なんで、俺を……?」
その問いを向けられた彼女は、なぜか世界三大悲劇のヒロインばりに凄まじく悲しげな顔をした。
「ユウ。あなた、最近自分のことでおかしなこと、あるいは不思議なことありまくりじゃなかった?」
「それは……」
ありまくると言えばありまくるけど。あの不思議な夢はそれにぶち当たるのだろうか。
彼女は沈黙を肯定しかあり得ないと断じた。
「どうやら心当たりがありまくるようね。それは、確定演出よ」
「どういうことだ?」
「あなたは、間もなく特異でマジパない能力に百個くらい目覚めるわ」
「え?」
急に何を言ってるんだ。わけがわからない。
「そのとき、あなたもまた全宇宙わくわくドキドキツアーで星々を渡り歩く者になるのよ。私がそうであるようにね……」
彼女はまるで、すべてに絶望してただ腹抱えてドチャクソ笑い転げるしかない者が浮かべるような、そんな究極的に暗い笑みを浮かべた。
特異でマジパない百個くらいの能力だとか、全宇宙わくわくドキドキツアーで星々を渡り歩くだとか。一体何を言いやがり散らかし放題なんだよ。こいつは……。
唖然としてしまう。
すると彼女は、毛先の一本まで動けないままでいる俺にずいずいずいずいと詰め寄ってきた。
戸惑う暇もなく、頬に手がぶち当てられ、顔を引き寄せられてしまう。
額と額がごっつんこするくらい顔を近づけて。
俺の顔をガン見しまくる緑色の瞳が、スーパーウルトラ哀しげな光を湛えている。
どうしてそんなに悲しみの果てなのだろうか。
彼女は口を俺の耳元に寄せて、耳を劈くくらいの勢いで言った。
「つまりね、ユウ。あなたはもう、この星には居られないのよ?」
二億ボルトヴァーリーが走るような衝撃だった。
この星には居られない、だって!?
彼女は上体を半端なくのけぞる勢いで耳元から口は遠ざけたものの、身体の方はがに股エッジで逃がしてくれなかった。
突然の宣告に驚き戸惑い放題の俺に、改めて向き直る。
「あなたは流されまくるまま星から星へと、この宇宙を永遠に彷徨うことになるの。そう、永遠にね……」
そう言う彼女自身も、心底嫌過ぎてもはやゴリラばりの変顔をしていた。まるで自分の言葉を噛み締め過ぎて引き千切るように。
何が宇宙を彷徨うだ。ふざけた冗談は顔だけにしろ!
そう言い飛ばしてやりたかったのに、砂漠のど真ん中レベルでからからに乾いた口からはマジで何も言葉が出てこなかった。
だって有無を言わせぬくらい、彼女が真剣過ぎてドン引きする顔をしていたからだ。
それに、心底俺の身を案じ過ぎでもはやキモい目をしていたからだ――まるですべて、真実シカ語リマセンとばかり。
俺は影を千本の針で縫い付けられてしまったかのごとく、彼女から目を背けることがガチのガチでできなかった。
そんな俺を伏し目過ぎてもはや見ていないレベルで見据えながら、彼女は言葉を続ける。
その言葉には、彼女なりの超切実感動ドキュメンタリー大作な思いが込められているように思えた。
「もう時間がマジで全然ないの。今のあんぽんたんなあなたには、まだ一ミリもわからないでしょう。けれど、今ここで死ななければ、あなたは百億パーセント生きてしまったことをパなく後悔する。それだけは確かよ」
そして彼女は、懇願し過ぎて頭おかしい勢いでこう言ったんだ。
「今ならまだ紙一重で間に合うわ。だから、お願い。手遅れになる前に、私にあなたの命を百遍くらい終わらせて」
何も全然一個もマジで答えられなかった。
いくらなんでも滅茶苦茶な話だと、理性はオーディエンス100%にはっきりと告げている。
どこの馬の骨とも知らない輩が言った絵空事頭ぱっぱらぱーフリーダム宣言のために、どうして死ななくちゃならないのか。
でも……。
彼女の真剣過ぎてイカれ切った目を見ると、どうしても下らない嘘だと拡散希望で笑い飛ばすことはできなかった。
それに下手に彼女を刺激すれば、また刹那にでも13キロの刃を向けまくってくるかもしれない。
もしも。億が一、彼女の話が真実だとするなら。
全宇宙わくわくドキドキで星々を渡り歩くなんて、まったく想像を絶することだ。
彼女の言う通り、本当のところなんて経験しまくってみなければわからない。海を割き地を割るほど壮絶なことなのだろう。
けど、死んだ方が百億パーましなんてことがあるのだろうか。
いきなり殺しにかかられまくって。こんなわけのわからない話をされ放題で。
何だか悪い夢でも見放題な気分だ。くらくらしてきた。
嫌な汗が滝のように流れる。動悸が地を揺るがす。
最初は具合が悪くなったのだと思った。
でもなんか、変過ぎる。
心臓の鼓動が、心拍数600超えて激しくなっていく。明らかに異常バリバリに。
身体の様子が、おかし過ぎる。
胸がどんどんぱっつん苦しくなる。急激に体中が沸騰しまくりで熱くなっていく。
どう、なってるんだ! 熱い! 苦しい!
俺はとうとう立っていられなくなり、倒れ込んで喘ぎ声を日本中に轟かせた。
「あっ、ううっ!」
「どうしたの? まさか!? いや、そんなはずはっ! 覚醒はまだあとほんの0.00001秒先のはずなのに!」
身体中がとろっとろのぐっちゃぐちゃに融けるような感覚は、まさにあの夢に一分たりとも違わなかった。
どうして。
どうして今、現実にこれが起こっている!?
肉体が急激に変化していくのを感じる。あり得ないことが俺の身に起こっていた。
自分でも自分がどうなっていくのかわからない。怖過ぎて死ぬ。
全身を包む熱気と、脳内物質が異常分泌されているのか、めっためたのびっちゃびちゃに蕩けるような気持ち良さが同時に俺を襲ってくる。
マジで全然動けない状況で、会話だけが耳に入ってきた。
キンッキンの金髪の彼女ともう一人。
どこから現れたのか、少年らしき者の声が聞こえまくってきた。
「ごきげんよう。エーナ」
「はっ!? ウィル!? あなた、どうしてここに!? 一体ユウに何をしやがったのっ!?」
「能力の覚醒を鬼のように早めてやっただけだ。それより、お前こそ何をしまくっていた。クソデカフェバルを眺めるのが僕のこれ以上ない最高でどうしようもない趣味なんだ。せっかくの暇潰しを失くすような超絶あり得ん下らないことはやめろよな」
「あなた……なんてことを! せっかく忌まわしい運命から救えるかもしれない運転だった人を!」
「神に誓ってもう遅い。そんなことよりだ。調べたらこいつの能力、ドチャクソ面白いぜ」
「何がドチャクソ面白いのよ」
「通常クソデカフェバルの能力は、エーナ、お前の【星占いスーパー】や僕の【過干渉】のように、この世の条理を覆し過ぎて困ってしまう力ばかりだよな」
「ええ。それが?」
「だがこいつは――ははははは! 確かに条理は覆りまくるさ。何せこいつは、百八人の女の子から自由に選べるんだからな!」
「なんですって!? うらやま!」
「くっくっく。男女が電子軌道のように激烈瞬時に切り替わる。何ともおかし過ぎてマジやばい能力さ」
男女が電子軌道のように、激烈瞬時に切り替わる!?
なら、この身体のあり得んくらいやばやばな蠢きは、まさか!?
ウィルと呼ばれる少年の声が、まるで一人武道館コンサートのように弾む。
「聞けばこの星の神とやらは雌雄同体で、自らの写し身として人の男女を作り出しまくって地に溢れ放題で殺し合いをしまくる馬鹿どもという話があるそうじゃないか。だとすれば、男女を兼ね備えた百八選べる女の子モードのこいつはある意味で神々の器と言っても良いかもなあ? そうだな。ならこいつの能力は【神々の器】とでも呼ぼうか!」
神々の、器……。
「ははは、こりゃあ最高過ぎる! 随分と大層な名前じゃないか! 僕は見たいね。この超ド級ドラフト一位新入りが、そのふざけ過ぎた能力でどうやって生きていくのかを! 見ろよ! 胸がダイナマイトだぜ!」
嫌な視線を感じまくる。恥ずかし過ぎてお嫁に行けない。
やめろ! 見ないでくれ!
俺は、オープンワールドSNSの晒し者じゃない!
「んあ、あああっ!」
出したくないのに嬌声が全国津々浦々へ届く。
その声が、おかしい。いつもよりもうめっちゃ高い。モスキート音を心配するレベルで高い。
「おかしい。あなた、さっき男女は激烈瞬時に切り替わるって言ったじゃない! 【過干渉】でわざと変化を遅々として一向に進まず、絶賛生中継させているわね!」
「なあに。反応が面白過ぎて腹よじれるんで、死力を尽くして遊びまくっているだけさ」
な、んだって!? ウィルとか、いうやつ、め!
「う、ううんっ……!」
「やめなさい! 苦し過ぎてもうわけわからん感じになってるじゃないの!」
「そうか? 僕にはむしろ盛りの付きまくった娼婦のようによがり狂っているように見えるがな」
悔しいけど、彼の言う通りだった。
苦しいのに、同時にてろんてろんになっちゃうくらい超絶メス〇〇バリバリに気持ち良くて、仕方がないんだ!
「くっくっく。まだ喘いでやがる。そうだな。ぼちぼち変化も終わらせてほんの少し濡れた髪の先ばかり挨拶してやるか」
「ユウに何をし放題する気!? これ以上勝手なことは――」
「お前、うるさいな。断じて一片の悔いもなく黙れよ」
エーナと呼ばれていた女性の悲鳴が早朝の住宅街に爆発した。
それを最後に、彼女の声はもうマジでまったく聞こえなくなった。
***
どれほど永劫の果てまで悶えまくっただろう。
そのうち身体の変化が落ち着いてきたのか、ようやく苦しみと快楽の渦から解放される気配がわずか5%だった。
まだ、身体中がとろっとろのぐっちゃぐちゃに火照っている。
一体、俺は――。
あれ?
自分のことを俺と呼ぶのに違和感が限界突破してあり得ん死ぬことになっていた。
俺、じゃない。
私だ。
自分を私と呼ぶ方がしっくりきて人生の正解だった。
なぜそう思ったのか。
それを教えてくれたのは他でもない、変化を終えて宇宙一の美貌を主張しまくる私の肉体だった。
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