第4話 竜の屍を供養せよ(終)

「悪鬼退治の次にゾンビ化したドラゴンの討伐はハードワークどころじゃないと思うんですけどー」

「割とよくあることだろうに」

「それはそれ、これはこれって奴ですー」

 年甲斐もなくむくれるルドベキアに対し、ラナンキュラスはやれやれと肩を竦める。

「……おい」

「どうし──」

 眼前の光景に暫し唖然とした後、ルドベキアがぽつりと呟く。

「討伐の手間、省けましたね」

「一応はな」

 頭に剣を突き立てられた巨大な屍を見上げたままラナンキュラスは溜め息を吐く。

「ざっと見た感じ怨念は粗方浄化されてるっぽいですし、このまま帰って良いんじゃないですかね?」

「より凶悪なゾンビを作りたいならそれでも構わんが」

「……後始末、お願いします」

「元よりそのつもりだ」

 手にした杖を掲げ、ラナンキュラスが呪文を唱えるとドラゴンの屍は瞬く間に灰と化していく。

「あのドラゴン、何でゾンビになっちゃったんでしょうね」

「粗悪な呪術をかけられた痕跡があった。恐らくそれが原因だろう」

「おお、さすがは専門家」

「術者がまだ生きているようなら指導の一つもしてやりたいところだがな」

「小言じゃなくて指導なのが怖いんですけど」


──数日後。

「そういや知ってるか?ゾンビ化したドラゴンを《蒼の聖女》が倒したって話」

「ったりめぇだろ、ここ最近その話で持ちきりだぞ?」

「やっぱすげぇよなぁ、あんな狂暴な奴もあっさり倒しちまうなんて」

「俺たちも頑張らねぇとなぁ」

 酒場の一角で若い冒険者達が雑談に花を咲かせる中、ラナンキュラスは煌びやかな聖堂の前に佇んでいた。

「あまりこちらの仕事を増やしてくれるなよ、名声に取り憑かれた聖女サマ」

 皮肉交じりに呟いた後、ラナンキュラスは闇の中へと姿を消した。

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調整屋ラナンキュラスのライフマネジメント 等星シリス @nadohosi

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