第3話 悪鬼化した人食い鬼を退治せよ
ある日の昼下がり、料理の仕込みに精を出す青年しかいない店内に小気味良いドアベルの音が鳴り響く。
「いらっしゃいま……」
暫し固まった後、青年は申し訳無さそうな顔をする。
「ごめんなさい、アンデッド向けの食事は提供してないの」
「果実酒はあるか?」
「シードルで良ければ」
「ならそれを一杯」
物々しい雰囲気を漂わせる黒衣の男に臆することなく青年は要望された品を提供する。
「リヒト」
「あらミユ、お腹空いちゃった?」
ミユと呼ばれた少女は小さく頷き、カウンター席の片隅に座る。
「パンとポタージュで良い?」
「うん」
「……
「そう珍しいことじゃないわよ?大地主のリジーなんて十人以上の面倒を見てるもの」
「食べるためにか」
「……ボクがこの子の面倒を見てるのは別件よ」
青年──リヒトと黒衣の男との間に不穏な空気が漂う中、ドアベルの音が派手に鳴り響く。
「すいません、待ち合わせに使わせ……ってラナンキュラスさん早っ!」
「お前が遅いんだ」
「うぐっ、そりゃまぁ確かにちょーっと迷子になりましたけど……」
新たな来客こと赤い鎧の騎士が瞬く間に空気を変えたことにリヒトとミユはぽかんとする。
「あっ店主さん、野菜たっぷりのシチューってありますか?」
「え、ええ、勿論あるわよ」
「ニンジン多めでお願いしまーす!」
「見かけによらず菜食系なのね……」
「こいつは
「あらそうなの。
「よく言われるんですよねー」
「人のせいにするな」
食事を済ませた後、黒衣の男と赤い鎧の騎士は町外れの森に足を運んでいた。
「準備は良いか、ルドベキア」
「いつでもいけますよー」
片や骸骨、片や半人半馬の姿に変わるや否やけたたましい咆哮が森の中に響き渡る。
「反応が早いな」
「そりゃー殺意ガッツリ出しましたからねー」
構えた斧の柄を強く握り締め、半人半馬に変じた赤い鎧の騎士──ルドベキアは一点を見据える。
「──来ますよ」
ルドベキアがそう告げるのとほぼ同時に現れた巨躯の悪鬼は再び咆哮を上げ、拳を振りかぶる。
「ガッ……!?」
「ラナンキュラスさんナーイス」
「さっさと終わらせろ」
「はーいはい」
軽い調子で返事をしつつルドベキアは骸骨に変じた黒衣の男──ラナンキュラスが操る死霊達に押さえつけられた悪鬼の傍へと歩み寄る。
「ギ……!」
「悪食もここまでだ」
酷く冷たい声で呟いた後、ルドベキアは手にした斧で悪鬼の首を刎ねた。
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