第2話 乱獲を繰り返す密猟者を懲らしめよ

「お、おい、こいつってまさか……」

「腰に提げた髑髏と天秤の紋章……間違いない。《調整屋》だ」

「分かっているなら話が早い。今すぐ乱獲を──」

「うるせぇ!こちとらこれでしか食い扶持を稼げねぇんだよ!《調整屋》にカチコミかけられたぐらいで今更止められっか!」

 身勝手極まりない言い分を叫びながら密猟者の一人は手にした斧で《調整屋》を斬り伏せる。

「へ、へへっ……どんぬぅわああぁぁ!」

「人の話は最後まで聞けと教わらなかったのか?」

「ひいいぃぃ!」

「……これはもう、強硬手段を取るしかなさそうだな」

 変身の魔法を解いて骸骨の姿になった《調整屋》はどこからともなく取り出した杖の先で地面を二度叩く。

「な、何だ?」

「頭の中で、声が……」


『いたい』

『くびがいたいよぉ』

『つかない』

『てがくっつかないの』

『どこ』

『ぼくのあしはどこ?』

『かえせ』

『あたしたちのけがわをかえせ』

『かえせカエセかえせカエセかえせ』


「ぴぎゃあああぁぁぁ!」

 情けない悲鳴を上げながら逃げ去っていく密猟者達の背中を暫く見送った後、《調整屋》は溜息を吐く。

「三日……いや、四日悪夢を見せて反省しないようなら腐食の呪いも視野に入れるか」

『ねぇねぇガイコツさん』

「ん?」

『ぼくたちこれからどうなるの?』

「《収拾屋》に引き渡す」

『しゅーしゅーや?』

「今来た奴だ」

 《調整屋》が見上げた先──上空から悠然と舞い降りてきた白い牛は不思議そうに首を傾げる。

「これは一体どういう状況でしょうか?」

「密猟者を懲らしめるために一芝居打った」

「ああ、それで」

『うしさんがしゅーしゅーや?』

『しゅーしゅーやってなにをするの?』

「詳しい話は移動中にするからまずはボクの背中に乗ってねー」


──二日後。

「なぁ聞いたか?真白兎ホワイトラビットの乱獲で荒稼ぎしてた連中が自首したって話」

「冒険者ギルドがいくら注意喚起しても止めなかったのにどうしたんだろうな」

「祟りがどうとか喚いてたらしいぞ」

「あー……そりゃあんだけ好き放題やってたら恨みの一つや二つ買うよなー……」

 酒場で冒険者達が雑談で盛り上がる中、自分の仕事を終えた黒衣の男はテラスの一角で読書に耽っていた。

「この見解は興味深いな……ふむ、これも中々……」

「ラナンキュラスさん、また新しい魔導書を買ったんですか?偶にはご馳走でも食べれば良いのに」

「食事や睡眠に割く時間が惜しくてアンデッド化した奴に何を言ってるんだ」

 同寮のあんまりな言い草に赤い鎧の騎士は肩を竦めた。

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