母からの手紙

 卒業式は厳かに執り行われた。ふざける生徒はいなく、みんなまじめだった。何人かの女子は泣いていた。男子で泣いているやつはいなかった。泣くのが恥ずかしいと思っていたのだろう。 

 今日、僕は卒業式が終わったら親へ手紙を渡すことになっている。

 毎日ご飯を作ってくれていることや、野球チームの送迎をしてくれることへの感謝とかを書いた。

 でも僕は卒業式の後、親へ手紙を渡さなかった。照れくさくて恥ずかしかったからだ。

 数人の友達と卒業式の帰りに、里山にある秘密基地に行き、焚き火をして手紙を燃やした。

 家に帰ったあと、昼ごはんを食べているときに、母から僕へ手紙を渡された。まさか親から僕へ手紙があるとは思わなかった。僕はびっくりした。

 僕への想いがつづられた手紙だった。

 「生まれてきてくれてありがとう」

 「野球チームの応援楽しかったよ。頑張っていたね」

 「小さいときはいつも一緒にいたけど、大きくなってからはあまり一緒にいなくなったね。さびしいよ。いつまでもお母さんと仲良くしてね。母より」

 母からの手紙に僕は泣きそうになった。

 そして手紙を燃やしてしまったとこを心から後悔した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先生の涙 久石あまね @amane11

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ