第3話気づき

その日から私達はお昼は中庭で渡辺くんも含めてお昼をすることが恒例になった。


次の日優子ちゃんは渡辺くんの為に菓子パンを多めに持ってきてくれた。


渡辺くんも少しおかずを多めに持ってきて私達のお弁当交換は定番となる。


「本当に渡辺くんのお弁当美味しいね!」


「私は、卵焼きが好きだわ。今度お母さんにレシピ聞いておいてくれる?」


「あっ、私も聞きたい!」


美紀の提案に私も慌てて賛同する。


「じゃあ真夜が聞いて私たちに教えるってことでどう?」


「お、俺はなんでも」


「別にみんなで聞けばいいじゃん」


「そこは……ねぇ?」


3人は含み笑いをする。


クーっ!


3人のからかう顔に歯がゆくなる。


「あっ渡辺くん次の授業用意あるよー」


すると通りかかった女生徒が渡辺くんに声をかけた。


「あっそうだった。ありがとう」


渡辺くんは早めに食事を終えると先に席を立った。


「じゃあお先に」


「はーい、用意頑張ってね」


「じゃあネ」


「うん、真夜帰りね」


渡辺くんは私に声をかけると教室へと早足に向かった。


その途中も他の生徒に話しかけられたり、渡辺くんは今や普通の生徒のように声をかけられることが増えていた。


私としてもそれが目的だっから誤解も溶けて嬉しいのだが……なんとなく胸がモヤモヤする。


「しかし渡辺くんって全然普通だね」


「本当に、顔が怖いくらいで他の男子より大人しいくらい」


みんなもすぐに渡辺くんの良さをわかってくれて打ち解けていた。


「でしょ!」


私は自分の、事のように嬉しくなる。


「はいはい、でもさー真夜はそれでいいの?」


美紀の言葉になんのことだと首を傾げる。


「だって……渡辺くんとは勘違いでこうなったわけでしょ?」


「あっ……」


そうだった。

なんとなく今の関係が心地よくて忘れていたが本当なら付き合いを解消するのが目的だったのだ。


「渡辺くんならちゃんと説明すればわかってくれるんじゃない?」


優子の言葉に想像してみる。


確かに渡辺くんなら笑ってわかってくれそうだ……でも……


なんとなくまだそれをしたくなかった。


「そう……だよね」


私は食べかけのお弁当を置いてしまう、なんとなく食欲がわかなかった。


「まぁ決めるのは真夜だよ」


千夏の言葉にコクっと頷いた。



次の日私は先生に昼休み前に呼ばれてしまったのでみんなに先に中庭にいっててもらった。



「しかしさー、真夜どうすんだろね?」


美紀は真夜の態度がもどかしくて2人に問いかけた。


「ありゃどう見ても両思いでしょ、でも最初の勘違いがあるから踏ん切りがつかないんじゃない?」


「そうだよねー、全く真夜はなんで間違えてラブレターを隣の下駄箱に入れるかな?」


「「本当に!」」


「それって……どういう事?」


「「「え!?」」」


美紀達渡辺くんの声にガバッと後ろを振り返った。


そこには悲しそうな顔の渡辺くんがいた。


「ち、違うの!その下駄箱を間違えたのは本当だけど真夜は……」


「隣って言ってたよね……あぁ聖也か」


渡辺くんは納得した顔をする。


「ねぇ待って!言い訳させて!」


美紀が立ち上がるとそこにタイミング悪く真夜が来てしまった……


「真夜……」


美紀達は申し訳なくて真夜の顔を見つめる。


「真夜、ちょっと来てくれる?」


「え?う、うん」


すると渡辺くんは真夜を連れて2人で何処かにいってしまった。


2人の背中を3人は後悔しながら見送ってしまった。





「えっと……どうしたの?」


私は突然渡辺くんに連れられてあの体育館裏に来ていた。


渡辺くんは私の腕を掴んで歩くがなかなか話をしてくれない。


変な雰囲気に私も戸惑うばかりだった。


すると渡辺くんは手を離してこちらを向く、その顔はなんか悲しそうに笑っていた。


「いいよ、別れよ」


「え?と、突然なに?」


別れるって何が私達?

最近は何となく仲良くなって来ていたのに

急にどうしたのかとわけを聞こうとすると……


「あの告白……間違えだったんだってね」


「あっ……」


「ふっ、その顔は本当みたいだね」


「違っ!そうじゃなくて……ごめんなさい」


確かにあれは間違えだけれど……今の気持ちは……


「真夜、聖也のことが好きなんだよね?俺、協力出来るよ」


「え……」


渡辺くんの提案に頭が真っ白になった。


「確かに聖也なら好きになるのもわかる。真夜となら……お似合いだよ、俺も応援する」


「私と高橋くんが付き合っても……いいの?」


私がそう聞くと渡辺くんはコクっと頷いた。


「そっか……わかった。じゃあ話はそれだけだね」


「うん……」


「私、ご飯まだだからみんなのところに行くね!」


私は渡辺くんの顔を見れずにすぐに振り返ると走り出した。


走っていると頬に冷たい水が当たる。

私は涙を拭くとみんなの元に向かった。


「真夜……」


みんなのところに着くと3人とも心配そうな顔で駆け寄ってきた。


「私……別れて来たよ!」


私は心配させまいと明るく答えた。


「ご、ごめん……」


美紀が泣きそうな顔で謝る。


「なんで?だって最初からこうする目的だったじゃない」


「真夜……今からいって誤解解いてくるよ!」


優子ちゃんが走るのを私は腕を掴んで止めた。


「ううん、渡辺くんにその気はないんだよ」


「なんで!?」


「私ね、聖也くん紹介するって言われた……聖也くんとならお似合いだって……」


そこまで言ってて涙がまた溢れてくる。


「わ、私……」


渡辺くんのこと好きになってた……


私の本当の気持ちに気がついたが……既に遅かった。

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間違いから始まる恋 三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5 @nawananasi

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