どこか懐かしいような、優しい物語でした。
想い合うがゆえに疎遠になってしまったハルとナツ。ナツの一大決心を前に、二人はどうするのか……。
ハルとナツを、愛に溢れる視線で見つめるヒロインのシキ。語り手でもある彼女の存在が、この作品に強烈な個性を与えています。
シキには恋愛感情というものがわかりません。そのために抱く葛藤や疎外感を強く主張するでなく、終始穏やかに、しかし決して揺るがぬ個性として描かれているのが印象的でした。
恋愛感情があってもいい。なくてもいい。どんな個性にも、思いやりと尊重する意志があるなら、そこには愛が生まれるのだと気付かされます。
こちらはゆあん様の自主企画『筆致は物語を超えるか』参加作品となっております。登場人物、大まかストーリーが固定で、あとはもう書き手の筆致、個性で魅せろ!という大変楽しい企画です。
しかし、今回のストーリーがですね、まぁどうしても暗くなりがちと言いますか、なんというか。その辺は企画の概要をチェックしていただくとして。
それで今作はですね、固定キャラである『ハル』と『ナツ』の他に『シキ』という人物がおりましてですね、それがこの『ハル&ナツ』の幼馴染みという設定なわけですが。
この三人の関係がね、すごくいい。
あんまり書くとネタバレになっちゃうから書けないんですけど、いやもうすごくいい。良いじゃない、こんな友情の形があったってさ、って。何が好きとか、何が好きじゃないとか、そういうのはもうほんと、その当事者達だけのものなんですよ。それをね、たまたまマジョリティに生まれた人間が上から目線でやれ「受け入れましょう」だの「認めましょう」だのってね。どうだって良いじゃないですか。大事な人っていうのは、異性だからとか同性だからとかそんな括りなんて関係なく大事なんですよ。
どうしても決まったストーリーがあるので、何もかもカラッと爽やかに終わるわけではないですけど、それでもこの三人がいつまでもこの関係性を保ったままで(まぁ一部は一歩進んでくれてもいいんだけど)いてくれたらなと思いました。