第5-6話 「南の海へ」
こうして、駅建設の合間を縫って準備が進められて、「対話」は10月に、沖縄近海で実施されることになった。
会場となるソレイユ号は、定期通信に参加している放送局が、共同で手配した。
地球の企業同士のやり取りということで、割合スムーズに事が進んだらしい。
プラチナ板については、公の場では、何も語られることがなかった。
対話の相手は、自薦他薦で多数の申し込みがあり、マルガリータはその中から4人を選択した。
長年、地球外生命体を研究していた科学者が2人(A国の白人男性とアジア系女性)。
人類の宇宙進出の必要性を説く哲学者(中東の男性)。
そして医師(欧州の白人女性)。
全員、英語は話せるが日本語は不可なので、同時通訳が3人体制で付く。
10月の中旬。対話メンバーや通訳、報道関係者を乗せて、ソレイユ号が那覇クルーズターミナルを出港。
久米島との中間点、渡嘉敷島近辺に差し掛かったところで、「星の人」が船上に降下した。
10月とはいえ、南国の日差しは強い。
陽光の中、白いポッドが静かに降りてくるのを、対話メンバーは眩しそうに見つめていた。
そしてポッドから登場したのが、体格の良い兵士たちだったので、対話メンバーは少し戸惑った。
スチールに率いられた機動歩兵がデッキに展開し、安全確保をすると、入れ替わりにもう一台のポッドが降下する。
マルガリータ、続いてマリウスが姿を現すのを、対話メンバーは笑顔で迎えた。
握手と共に自己紹介が行われる。同時通訳が入る。2人は通訳者とも握手した。
マルガリータが、対話メンバーとにこやかに会話する背後で、マリウスは超然としていた。美貌と無表情に気圧されて、誰もが近づきがたく感じていた。艶めく黒髪が潮風になびく。
海上保安庁との警備連携のため、タカフミと堂島も対話に参加していた。
そして堂島は、マリウスの姿を、どこか悟ったような表情で眺めていた。
「私が馬鹿でした」
そう呟いた堂島に、タカフミはどう応答すべきか戸惑った。
「男とか、女とか・・・そんなこと、どうでもよかったんです」
「お前、何言ってんの? なぜ過去形?」
「些細なことでした。そんなことで本質は変わらない」
「いや、それ結構大事なことじゃないのか? 熱でもあるのか?」
「マリウス様のために、対話は絶対成功させましょう! おー!」
「おお? おー!」
心のケアが必要かもしれない、と心配するタカフミだった。
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