第1-4話 「通報」

 壮年の男が、デスクで銀河系の映像を見ていた。浅黒い肌に彫りの深い顔。頬や口元は、短く揃えられた濃い髭で覆われている。襟の高い白い上着には、金糸で精緻な刺繍が施されている。

 そこに、若い士官が部屋に入ってきた。足早にデスクに近づき、低い声で言う。

「ダハム提督、人払いを」

 ダハムと呼ばれた男は、室内を一瞥する。書類作業をしていた2人に、「お前たち、休憩に入っていいぞ。ゆっくり食ってこい」と声をかけ、退室させる。

 2人きりになってもなお、士官は小声で話を続けた。

「前哨から通報がありました」

「建設が始まったのか?」

「まだです。星間航法船が現れました。しかし、建設は始まっていません」

「なぜだ?」「分かりません」

 ダハムは壁の絵を見上げた。テロン共和国の国旗と、3隻の宇宙船が描かれている。

 士官は、3隻を指さして尋ねた。

「偵察させますか?」

 ダハムはかぶりを振る。

「チャンスは1度だけだ。星間航法を使ったら、察知される恐れがある」

 ニヤリと笑う。「建設が始まるのを待つ。獲物はとてつもなくデカいんだ。楽しみに待つさ」

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