【弐】27歳の独身息子が突然会社をクビになり婚約破棄されました助けてください
†
月給は四十
順風満帆な人生だが、そんな彼の先々を
野口今朝雄の母、『お
「なあ
「? お手伝いさんがいなくても我が親友であり
「……あー、そう」
いつもそんな調子なもんだから、老いたる者の常として、お
もういっそのこと秀三郎を嫁にするんだか、今朝雄が嫁になるんだか、『そう』であるのならば、それはそれで諦めがつく。しかし二人の言動と態度を見るからに『そう』ではないらしい。ならば早く良い嫁を迎えて自分が生きているうちに初孫の顔を見せてほしい、と明け暮れに迫っていた。
お
「なあ、お
「うーん、私はどちらかというとダンディな
「そうかね、それじゃあ仕方がないね。お
「え?!
「ちゃうよ。はい、じゃあお
「ごめんなさい……私は二人の関係を遠くから眺めている方が好きなんです。なんなら野口家の柱になりたい!!」
「ギャヒーー!!」
それから程なくして、同じ故郷の静岡から
「今朝雄オ
はい、あのです。
よくよく聞くと、おふきと今朝雄は幼き頃に顔見知りの仲であるらしく、これは良縁になるだろうと思ったお
寛三は
「
と前提して。
「
と語り。
「
と答えた。
それもそうやね、とお
今朝雄とおふきは同郷という話題があったので自然と話が弾み、お
だが人の心は数奇なもので。
今朝雄は、おふきに惚れに惚れて真面目になった。
おふきも、そんな今朝雄を慕うようになった。
明治20年6月18日。
──ついに二人は
その日の前日、つまり6月17日。
誰かがその良縁を妬んだのか、それとも単なる
その原因は
†
大晦日の混雑は深夜にも及んでいたが、午前三時となれば世間も
『年の節目は一夜を
明日こそ七草粥に箸を取るべき、1月6日。
お
一階の座敷ではのんびり
「野口君、あてにされちゃ困るけど例の話はほぼ纏まりそうだ。アレさえ出来れば、まあ少しは……」
秀三郎は上を仰ぎ見て。
「……心配事が減るだろう」
「いやあ親友は持つべきものだなぁ! キミの
「
「アーハハハ。これは一本取られた。ウンウン。もう
秀三郎の皮肉な冗談にも意に返さず、今朝雄は上機嫌であった。
「まあ喜んでくれたまえ! 僕も多分15日には少し懐が快復する事があるから。そうしたら、いよいよ『ふ』の字と立派に結婚する! 実は大晦日の晩にも大泣きに泣かれてさぁ……デヘヘ」
『
「なあ君、僕はどうも気にかかることがあるんだ」
秀三郎は本を閉じる。
「
その懸念を知らずか今朝雄は手を振って制止した。
「よろしいよろしい。もうそれを心配するな。明日の晩は
と今朝雄は大言壮語を吐いて忠告を打ち消し、寝室へと入っていった。
相変わらずつまらないだけの筈の今朝雄の
同刻、奇しくもその不安は新富町の方でも
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