第10話

 書いてあることが本当なのかウソなのかを考える前に、みんなはため息のような声をもらしていた。

「じゃあ、これはその宝のひとつってことか?」

 エイタはロボットに聞いてみた。

 

『その とおり デス』


「あちこちの異世界に宝があるってことは、この船でまたべつの異世界に行けるってこと……か?」

 ナオトが日記をぱらぱらとめくりながらひとりごとのように言う。

「たぶんそうなんだろうね。……だけど……」

 ヒュウガはなにかが気になっているようだった。

「どうしたの、ヒュウガくん?」

「ううん、なんでもないっ。それよりさ、またべつの世界にはどうやって行くんだろうね」


『それ ハ わたくしめ ニ おまかせ くださイ』


 ロボットがうしろからそう言った。さっきみたいに、操縦室のボタンをおすことで、べつの世界に連れて行ってくれるんだろう。

「こんどは、どんな世界かしら」

 ミカルが目をキラキラさせながら言う。

「まずは、腹ごしらえしようぜ! オレ、部屋の食料でなんか作っちゃる!」

 そう言ってかけだしたのはユウヤだ。

「こんどは、言葉の通じる世界だといいよなあ」

 ナオトがにがわらいしながら言った。

「モモコ、宝石は大事にとっときなよ?」

 アドバイスをくれたのはアリカだった。

「ありがと、アリカちゃん。うん、大事にしとく」

 モモコはかわいくうなずいた。

「……博士……日記……うーん、わかんないなあ……」

 ぶつぶつつぶやいているのはヒュウガ。

 だけど、エイタはエイタで、気になっていることがあった。

「どうしたの、エイタ?」

 マナが聞く。

「……そういえば俺たち、みんなみたいに、なんかとくいなこと、あったかなって……」

「好きなことくらいは、あるんじゃない? ……あったっけ……?」

 ふたりは思わず顔を見合わせた。



 まだ何も知らないエイタたち八人を乗せて。

 なぞとヒミツをいっぱいにかかえて、船は新しい世界をめざす。



 ――完――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ミステリーシップへようこそっ! 担倉 刻 @Toki_Ninakura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ