第9話

 船にもどった八人は、まず操縦室から探してみることにした。

 止まったままのロボットがなんだかこっちを見つめているようで、ミカルはびみょうな顔をする。

「動き出せば、気にもならなくなるさ」

 ナオトがそう言って、ミカルの肩をぽんとたたいた。

 操縦室には、バッテリーらしきものも、宝のヒントになりそうなものも見あたらない。

「甲板の下の部屋はどうだろうね? 食料とかあった、あそこ」

 アリカがうでを組んで言った。最初にエイタがマナに連れていかれたあの部屋だ。みんなはわれ先にと下の部屋へ向かう。

 部屋には、本棚もあった。エイタは来たばかりでわけがわからなかったときのことだから、そこまで見ていられなかったけれど、よく見ればベッドや、アリカが言ったように食料らしきものも積んであった。

「あった! これ、バッテリーじゃねえか?」

 ユウヤが大きな箱を持ち上げてさけんだ。たしかに、中にあるものは機械だらけで、いかにもロボットがらみのもののようだった。

「多分バッテリーだね。ロボットにはめこんでみよう」

 ヒュウガがひときわ大きな機械を手にとって言った。

 みんなは動かなくなっていたロボットのところへ急いで行く。ヒュウガが代表でロボットをもういちど調べてみた。

「ここだ。同じものがあるよ、取りかえてみるね」

 がしゃん、と大きな音がして、バッテリーがはずされる。ていねいに新しいものをはめこむと――――


『みなさま たから ハ みつかり ましたカ』


「動いたっ」

「ヒュウガ! やっぱおまえスゲー!」

 長い手をくるくると動かしながら、ロボットはふたたび動き出した。

「宝って、これのこと? さっき、行った世界で、もらったの」

 モモコがロボットに水晶玉を見せる。ロボットはぐいんと首を動かしてモモコの手のひらを見た。

 キュイーンと小さな音がする。みんなは息をのんでその様子を見つめた。


『これ ハ たしか ニ たから デスが たから デハ ありまセン』


「どういうこと?」

 アリカがかみつくように言った。


『くわしく ハ はかせ ノ にっき ニ かいて ありまス』


「日記……?」

 そのときマナが、「あ」と声を上げた。

「さっきの部屋に本棚、あったでしょう。そこに【日記】って書いてある本があった!」

「そこに、宝の話が書いてあるってことか!」

 八人はまたばたばたと部屋をめざして走った。うしろから、ロボットがあわてて追いかけてくる。

「これ! この本!」

 わかりやすく【日記】と書かれたその本を、マナがめくってみる。

 そこに書かれてあったのは、だいたい、このような内容だった。

 

 サンダー博士はわかいときに、研究であちこちの異世界をおとずれた。

 年をとってから、大金持ちになった博士は、自分が手にした大金を宝石に変えた。

 そうして、わかいときにおとずれた異世界に、ひとつずつ残していった。

 宝石を全部集めてしまったら、本当の宝が手に入る。

 宝石さがしを、何年もあと、自分がえらんだ【とくべつな子どもたち】にたくす。

 見つけた宝は子どもたちのものとなる。

 

「……へえぇ……」

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