最終話 真実と狂気

陽花ちゃんからの突然のカミングアウトに理解が追い付いていなかった。


 「何を言ってるの?パパ?俺、陽花ちゃんと一回もそんなことしてないしそもそも俺のでは子供ができにくはず。」


 「確かにそれが原因でお姉ちゃんとの間に子供を授かることができなかったですものね。まぁ、そこはちょっとしたドーピングですよ。お兄さんが眠る前に食べた食事には私特性の睡眠薬の他にちょっと強力な精力剤を仕込ませていただきました。でも、それだけじゃ心許なかったので私も子供ができやすくする薬を飲みました。そのおかげで私たちは愛の結晶を授かることができたのですよ。あっそれと、お兄さんとお姉ちゃんとの間に子供が授かれなくしたのも私です。」


 「は?どうやって?」


 「お兄さん昔よくうちに夜ご飯を食べに来てたじゃないですか。その時のお兄さんが食べてたものに子供を作るための機能を徐々に弱くする薬をお兄さんが高校生位から私が入れてたんですよ。濃度の調整大変でしたよ。調整を間違えると一生子供が作れない所か使い物にならなくなってましたから。」


 「本当はお兄さんのが不能とわかればお姉ちゃんから別れを切り出すと思たんですが、意外と愛が深くてびっくりしました。現に結婚までいって幸せに暮らしてましたし。本当に羨ましかった。そこには私がいたかった。後ろじゃなくて横に立っていたかった。」


陽花ちゃんの言葉をきいて一番否定したかった可能性が確実なものになっていっている気がした。恐る恐る俺は、陽花ちゃんにその可能性について聞いた。


 「よ、陽花ちゃん。まさか、妻をやったのって・・・。」


陽花ちゃんは俺の顔をじっと見つめた後、優しく微笑んで答えた。


 「えぇそうですよ。お姉ちゃんをやったのは私です。」


心の奥底が壊れる音がした。藁にも縋る思いだった。違うと言って欲しかった。


 「そ、そんなに・・妻の・・・事が憎かったのか。」


 「いいえ。私がお姉ちゃんに憎悪の感情を抱いたことは一度もありません。本当に優しかったですし尊敬もできる大好きな姉でした。」


 「じゃあなんで!なんで殺した!」


 「私が立っているはずの場所にお姉ちゃんが立っていた。ただそれだけのことですよ。最初は私もお姉ちゃんの恋を応援してたんですよ。お姉ちゃんが幸せになるならそれでいいと思っていました。でも、私が中学生くらいの時でしょうかお兄さんに対する恋心が芽生えてお兄さんの隣りに立ちたいを思い始めました。ですが、このころには既にあなたの隣りにはお姉ちゃんがいました。すると、どう感じたと思いますか?自分の好きな人の隣りに女性が既にいると、その女性が例え最愛の姉だとしても邪魔だって感じちゃったんですよ。」


 「だから、お姉ちゃんを手にかけたんです。遅効性の睡眠薬をお姉ちゃんの水筒に仕込んであたかも不慮の事故に見せかけたんです。もちろん、罪悪感がないわけではないんですよ。私がやったことが正しいことだとも思ってないです。ですが、それがわかったうえでもあなたが欲しかった。あなたを愛してしまった。」


陽花ちゃんは俺の上に跨り顔をグッと近づけた。


 「これからはお姉ちゃんの分まで幸せになりましょ。お金の面も心配しないでください。今まで開発した薬のライセンス料や株、会社経営もしているので10人くらいなら私一人の稼ぎで養えます。ずっとこの家で愛し続けましょう。お外に出すことはできませんが何不自由ない暮らしを約束しましょう。・・・っと、もうそろそろ時間ですね。」


陽花ちゃんはそういうと、ベットの近くにあった机の引き出しから錠剤を取り出してそこから2粒俺に飲ませようとしてきた。


 「何の錠剤?」


 「痛み止めですよ。お兄さんは今治りかけですからこれを飲まないと痛みを抑えないと大変ですよ。」


 「痛み?俺は怪我なんかはしてないはずだ。」


 「あぁ、今まで痛み止めが効いてて気づいてないんですね。」


陽花ちゃんは俺にかけられていたタオルケットを捲った。タオルケットを捲ると俺の両足首に身に覚えのない包帯がまかれていた。


 「何?これ?」


 「逃げられるのが嫌だったのでお兄さんの両足首の腱を切断させていただきました。経験はなかったですが、うまくいったと思いますよ。もう二度と歩けないと思いますけど私がお世話しますので安心してください。さぁ薬を飲みましょう。あっ口移しの方がいいですかね。」


俺は陽花ちゃんから逃げられない絶望と現状を変えられない無力感から現実や陽花ちゃんを否定する気力すらおきず、考えることをやめ体の力を完全に抜いた。

陽花ちゃんは痛み止めの薬を口移しで俺に飲ませた。


 「ふふ♡長かった。ようやくあなたを手に入れることができました。幸せになりましょうね。パパ♡」


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