鯖缶を食べる
明鏡止水
第1話
仕事からトボトボと帰路を歩いて帰宅し。
スカートとジャケット、のまえに大きな黒いリュックサックを下ろしてからぽてぽてと服を脱ぎ。
黒いインナー姿になる。下はスパッツだ。
冷凍のあんかけ中華と同じく冷凍うどんであんかけ中華うどん、大好きなエビ入りをチンしようか迷って。お皿もプラスチックだし、お箸はお気に入りの使うし、そんなに手間かからないんだよね。
一人暮らし?自炊?女性?
はっ!
だから?私の部屋の冷蔵庫にはパンに塗るマーガリンが箱ごと入っていてあとはゼリーとチョコレート。風邪を引いた時のための冷えピタ。
カロリーとチョコ習慣と果物ゼリー。完璧だ。
でも、もうひとつ主役がいる。キッチンの収納から一つ。
シュ!
中の空気が勢いよく放たれる。
え?腐ってないよね?来年まで大丈夫だもん!
鯖缶。
味噌煮の味を確かめるためつゆを飲む。
「うん」
普通。缶詰だ。全然!保存されてる!
私の主役。
仕事から帰った時、何にしようか迷っている間、私は鯖缶を食べる。蟹缶は試した事がない。
ハケンの品格で篠原涼子が言ってたな。お弁当作りしながら、鯖ははずせません、って。
私はお風呂上がりのビールのように、お風呂前の鯖缶を食べる。
そして入浴。ダイナミックに外国風に湯船で頭からつま先まで洗う。うつ病なのでそうしないとお風呂にまともに入れないのだ。
「きょうも鯖缶のおかげで、入れました……!」
自分をねぎらう。
他の独り立ちした、いとこたちや友達はみんなしっかり自炊してる。お弁当まで手作りしてインスタは祭りだ。
都心なので電車の音が響いて響いて。とはいかない。
田舎。そこの小さなデザイン会社。潰れるかもね。ブラックだし。
でも、しぶといから。案外生き残るかも。わたしも。ということはない。
ぼろっちいけど、遠いけど。
「これでも底辺。はたらいてます」
男用の脂を砕くシャンプーで数日分の皮脂を砕いてもらいながら。
デザインしなきゃ、生きていけない。
若い頃の、若い私は一体どこへ。
私は次はオイルサーディンとやらを試そうと思っている。お酒は飲めない。
鯖缶を食べる 明鏡止水 @miuraharuma30
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
あたらしいメガネ新作/明鏡止水
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます