最終話 これからも
「「リック!?」」
俺とサリナは同時に驚いていた。
五年前の事件以来、会うことがなかったからとても懐かしい感じがする。
身長もだいぶ伸びているし、爽やかな雰囲気だ。
そして、何より驚いたのがリックは日本語で話していたのだ。
「待っていてくれてありがとうございます、ユウさん、サリナさん」
驚きはしたが、それ以上に久々の再会に感動していた。
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「はい、おかげさまで。あの時、皆さんがいなかったら変わることができなかったと思います」
「ということは、自分で変われたと思えるようになったんだな」
「はい、自分ではそう思っています」
本当に変わったんだな。
見た目だけじゃない。中身も五年前とはまるで別人のようになっていた。
色々と大変なこともあっただろうが、よく挫けずに変わることをやめなかったな。
俺の信じた通りだ。
この子は変われると思っていた。
「二人とも、ここで話さないで中で話さない?」
「そうだな」
サリナの提案で俺はリックをリビングまで入れ、そこで話すことにした。
リックは入るときに、ちゃんと「失礼します」と言っていたのだが、それを見た俺はなんだか泣きそうになってしまった。
リックがリビングのソファに座ると、俺は色々と聞くことにした。
「リックは今日、日本に来たのか?」
「いえ、本当はもっと早くお二人を訪ねたかったのですが色々とすることが多くて今日になってしまいました」
「そうなのか。することって、何をしていたんだ?」
「実は今年から日本の大学で勉強させていただくことになっているんですよ」
俺たちを訪ねるまでの間、何をしていたのか聞くと、何とリックは日本の大学へ入学することが決まっているらしい。
リックは捕まっていた期間があるから大学への入学も遅れているのだろう。それにしても、まさか日本の大学に入るとは思いもしていなかった。
隣にいるサリナもかなり驚いているようで、口をぽかんと開けたまま静止していた。
「いやぁ、驚いたなぁ。まさかリックが日本の大学に入学するなんてな」
「俺はユウさんに憧れているので、そのユウさんが育った場所で生活してみたいなと思ったんですよ」
「え、憧れ? 俺が?」
「はい、もちろんです。俺は五年前のあの日からユウさんに憧れてますよ」
リックは日本の大学に入学した理由を俺に憧れていたから、俺が育った場所で生活してみたいと思ったからだと言う。
予想していなかったことを言われてしまった俺は少し困惑していた。
そんな俺を隣で見ていたサリナが笑顔で「良かったね」と耳元で囁いてくる。
「だから、日本語も勉強したのか?」
「はい、そうです。あ、でも、きっかけはそれでしたけど、日本語や日本について勉強していくうちにどんどん楽しくなって、今では完全に自分の意思で勉強してますね」
「そうなんだな。それは良かった」
きっかけは俺だったようだが、今では自分の意思で日本語や日本について勉強しているようだ。自分の生まれ育った国に興味を持ってもらえるのは、少し嬉しい気がする。
そっか。
日本の大学生になるんだな。
あ、そういえば、日本の大学で勉強することは分かったが、何か目指しているものとかあったりするのだろうか。
俺は気になってリックに聞いてみる。
「リックは何か目指しているものとか、なりたい職業とかあったりするの?」
「はい、それはもちろん決まっています!」
「お、気になる。聞いても良いのかな?」
「はい、もちろんです! 俺は、ユウさんやサリナさんみたいにダンジョン配信者になりたいんです!」
リックは俺たちのようにダンジョン配信者になりたいと言った。
たしかに考えてみればそうか。
俺に憧れてくれているんだもんな。俺に憧れてくれているとなると、必然的にダンジョン配信者になりたいと思うよな。
ダンジョン配信者になりたいと話し始めた途端にリックのテンションが急に上がったような気がするが気のせいだろうか?
リックは強いし、ダンジョン配信者になっても上手くやっていけるかもしれないと思った俺は、リックの夢を素直に応援することにした。
「リックもダンジョン配信者になるのか。リックならダンジョン配信者になっても上手くいくと思うよ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。俺、ダンジョンに潜るためにダンジョンの近くに住み始めたんですよ!」
「お、そうなのか? どの辺だ?」
「ここなんですけど、部屋も綺麗でいいとこですよ」
ダンジョンの近くに住み始めたというリックに住んでいる場所を教えてもらったのだが、俺はまたしても驚愕した。
なんと、リックが住み始めたという場所は、俺がサリナと同棲を始める前に住んでいた部屋だったのだ。
ここまで凄い偶然を目の当たりにすると、俺は思わず笑ってしまう。
「あははっ、こんな偶然あるんだな!」
「どうしたんですかユウさん?」
「サリナもこれ見てみて」
俺はサリナにもリックが住み始めた場所を見せると、サリナも俺と同様に笑ってしまっていた。
俺たちが笑っているのを見てリックが困惑していたので、俺は教えることにした。
「実はその部屋、俺がサリナと一緒に住み始める前に住んでいた部屋なんだよ」
「ええええええ!? そんなことって、あるんですか?!」
「だから俺もビックリしたんだよ」
「これは俺もユウさんみたいなダンジョン配信者になれるかもしれませんね」
「あはは、そうだな。あ、そうだ。それなら、これから一緒に少しだけダンジョンに潜りに行くか?」
「え、いいんですか!?」
「そこまで長くは潜れないけど少しだけならいいぞ」
「是非よろしくお願いします!」
俺はリックと一緒に少しだけダンジョンに潜ることにした。
「サリナも行く?」
「もちろん! 私だけ仲間はずれは嫌だからね!」
「あはは、そうだよな。それじゃあ、二人とも行こうか」
俺はダンジョンに行く時の服装に着替えてから三人でダンジョンへと向かった。
ダンジョンに向かいながら、俺はこれから先もこうして三人でダンジョンに潜ったりしていくのだろうと思った。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。 夜兎ましろ @rei_kimura
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