第3話 ゲーム開始
「ねぇ、どうして…」
「ごめんね…こうするしかなかったの、、、」
ずっと様子のおかしかったカオリだったが、とうとう膝から崩れ落ちて泣きだしてしまった。
「あ〜らら〜。答え、合わなかったみたいだね。じゃあ約束通り、両方燃やしたいと思いま〜すっ」
「ちょっとまって!もう一度チャンスを…」
涙ぐんでいるユキがそう言いかけると同時に、男はポッケから何かを取りだし、母と札束に向けて液体瓶を投げつけた。そのあと、マッチに火をつけて同じように投げた。
瞬間、薄暗かった教室が段々と紅蓮のように照らされた。
「うそ…」
目の前で母が燃えているという現実に、ユキはただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
しばらくたった後、そこに残っているのはヒトの形をした物体と、散り散りになった灰だけだった。物体はまだ燃え続けており、焦げ付くような異臭が鼻をつく。
「カオリがっ、、、。アンタがお金を選んだから!私のっ!!私のお母さんはっ…!!」
「謝って済むようなことじゃないのは分かってる。でも、私だって!!ママ…」
「はーい、無駄話はそこまで。次のゲームをしてもらうよ〜。2つ目のゲームは、ジャンケン。ルールは簡単、チミ達2人には僕と1人ずつジャンケンをしてもらうよ〜。勝負はチミ達両方勝つか両方負けるまで継続する。もしチミ達が両方僕に勝つことができたら、最後のゲームにすすむことができるよ〜。でも、、。2人とも僕に負けたら、その時はお前らを殺す」
突然、男の発言に緊張が走った。さっきまでの高らかな声とはまるで違うドスを効かせた低い声で、ユキたちを脅した。口元には僅かな笑みを浮かべている。だがしかし、母親を目の前で殺されているユキにとって、そんな脅しをされてもなんの動揺もしなかった。むしろ、すぐにでも母親のもとへ行きたいがため、いっそのこと殺して欲しいとすら思っているほどに。
「ユキ…。とりあえず、このゲームを早く終わらせて元の生活に戻ろうよっ!ねぇおねがい。私まだ、死にたくない、、。」
カオリから放たれたありえない一言に、ユキは正気を取り戻した。
「カオリがお金を選んだから、お母さんを殺したからこんなことになったんでしょ?なんでアンタがそんなに平静でいられるの!?さっきからおかしいよ」
「それも全部後でちゃんと話すから!ここで死んじゃったら…どうすることも出来ないじゃん」
カオリは涙ぐみながらそう言った。
(カオリがなぜお金を選んだのかは気になるし、ここで死んだらどうすることも出来ないのは分かってる。けどもしこのゲームが全部終わった時に、カオリと友達でいられることは絶対ない。どんな理由であっても、私はカオリを許さない)
「あっ。ちなみに言い忘れていたけど、僕はずっとチョキをだすよ〜!」
こんな簡単なゲーム、2人がグーを出せば一発で終わる。ユキはそう思っていた。
「じゃあ1回目〜。まずはユキからね。最初はグー、じゃんけんぽん!」
「あー、僕の負けだね。じゃあ次はカオリ。最初はグー。じゃんけんぽん!」
「あれ?勝っちゃった。ではもう1回ユキからね〜」
「え?」
ユキの口から思わず声が漏れた。カオリがパーを出したのだ。
「カオリ?出し間違えただけだよね、、自分で死にたくないって、元の生活に戻りたいって言ってたもんね?」
「う、うん。ごめんねユキ。次はちゃんとグー出すから、」
そう、男が本当にチョキしか出さないのであれば、ユキがグーを出し続けている以上、2人とも負けるということは無い。でもカオリが勝ってくれなければ、このゲームは一生終わってはくれないのだ。
「じゃんけんぽん!」
「じゃんけんぽん!」
「じゃんけんぽん!」
「じゃんけんぽん!」
・ ・ ・ ・ ・
じゃんけんは、10回、20回と続いていった。
「カオリ、いい加減にして!これは遊びじゃないんだよ。私までも殺す気なの?しっかりしてよ!」
「…」
「そろそろ疲れたから、チョキ以外も出そうかな〜」
「え、そんな…これだといつ勝負が決まってもおかしくない…」
ユキは、もし自分が負けてしまったらと考えるだけで頭の中が真っ白になった。
「ユキさん、行きますよ。じゃんけんぽん!」
「あら〜、単純ですね。せっかくチョキのままだったのに」
チョキ以外を出すと思ったユキは、相手がチョキを出す選択肢を捨て、パーさえ出しておけば負けることは無いと思っていた。が、男が出した手は変わらずチョキだったのだ。
「終わった、」
「僕の勝ちですね。ではカオリさん、いきますよ〜。じゃんけんぽん!」
「あ、僕が負けましたね。ではも〜いっかい!」
カオリはじゃんけんに勝ったのだ。一体カオリはなにがしたいのか。ユキはもう色んなことで頭がいっぱいだった。
31回目。ついに勝負が決まった。
「じゃんけんぽん!あ〜。負けちゃいましたか。仕方ないですね、あなたたちの勝ちです。では次のゲームをしましょうか。次は教室が違うので移動しましょう」
「はぁ、良かった」
全身の力が一気に抜けた。もうカオリとは口を聞けない。どうせ最後のゲームもカオリと協力できるわけがない。そう思いながら教室を出て、男のあとをついて行った。
「はい到着〜」
そこは、ユキたちが最初に集められた459教室だった。そして、ユキたちの他にも男子4人、元々この教室に居た生徒が集まっていた。あと1組のカップルペアは見当たらない。(あの4人は私たちと違ってまだ平気そうにみえるけど、同じゲームをしてきたのかな)
「皆さん集まりましたね〜。ここにいる皆さんは、2つのゲームを見事クリアして生き残った方々。おめでとうございま〜す。では今から最後のゲームを始めます」
「最後のゲームは、、、、人狼ゲーム」
所詮友情されど友情 ひらひら @k141010
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