第2話 面談

「カオリ…?どうしたの?一体何を話してたの?」

「大丈夫だよユキ。なんでもないから。なんでも…」

「次はユウマさん」

カオリの次は、男子生徒のうちの1人が呼ばれた。カオリが戻ってきてからタニカワとどんなことを話したのか、何があったのかを聞こうとしたが、そんなことを聞けるような状態ではまるでない。ユキは、ただカオリの背中をさすり、泣き止むのを待つことしかできなかった。5分ほど経った時、今まで俯いていたカオリが顔を上げ、

「ありがとうユキ。でもあの人と何の話をしたかは今は言えないの」

「いいよ。分かった」

(向こうで何があったのかは分からないけど、とりあえずカオリが落ち着きを取り戻せて良かった。)私もなにか酷い目に遭わされてしまうのではないかと身がすくんだ。

少しすると、教室の後ろのドアが開いた。そこに立っていた男子生徒は、特に変わった様子もなく自分がいた場所に戻って行った。それからも、残りの男子生徒4人が順番に呼ばれたが、10分くらいで戻ってきた。

「次、ユキさん。こちらへ」

ユキは不安でしかなかったが、何も起こらないことを祈って隣の教室へと向かっていった。そこには、机と椅子が二脚ずつあり、面談をするためだけの教室だった。

「ここに座ってください」

「先生、面談から帰ってきたカオリが泣いていたんです!どうして泣いていたのか教えて貰えませんか!?」

ユキは、恐怖心よりもタニカワがカオリを泣かせたことについて心底腹が立っていた。

「進路希望先が学力的に厳しいことについて伝えたまでですよ。他の生徒たちにも進路のことについてと、今隣にいるペア(友達)との所縁を少しとね」

「そんなことでカオリがあそこまで悲しい顔をするなんて思えません。本当のことを教えてください!」

「まぁまぁ、一旦落ち着いてください。まずあなたには、カオリさんとの所縁を聞かせて貰ってもいいですか?」

「覚えてません!そもそもカオリを泣かせたあなたにそんなこと教えたくありません!」

カオリと仲良くなった理由を本当に覚えていないというのもあったが、何を聞かれても絶対に答えてやるもんかと腹を括っていた。

「いいですね。これも『友情』ですか。面談は終わりです。戻っていいですよ」

「次カオリを泣かせたら、絶対に許しませんから」

初めてではないだろうか。こんなに人に対してムキになったのは。それだけカオリは、いつのまにか私にとってかけがえのない存在であり、信頼できる友達だったんだと思った。

ユキが席に戻ると同時に、

「次アカネさん。こちらへ」

「じゃあ、行ってくるね」

「おう、余計なこと言っちゃだめだぞ」

「分かってるってっ!」

(あ、この2人カップルだわ…)と思いつつも、本当にみんな進路の話をしただけなのか、私はどうして進路の話がなかったんだろうと、気にかかっていることが沢山あった。カオリも落ち着きを取り戻したとは言えど、ずっと下を向いてこちらを向いてくれない。

アカネが隣の教室に行ってから少し経った時だった。突如、机を思い切り倒したような音が教室中に響き渡った。これにはユキも思わず顔を上げ、話していた生徒たちもみな静まり返った。アカネの彼氏(?)は「あーあ、やっちゃった」と言わんばかりの顔をしている。

それからしばらくした後、アカネが戻ってきた。

「あー腹立つ!あいつ絶対許さないから!」

「アカネ。何言われたんだよ?」

「あいつ、アカネの家族のこと知ってたのよ!」

(家族のことを知っていた…?タニカワとそんな話をしたと言うこと?じゃあカオリもタニカワに家族のことを…)

アカネが入ってきて少ししてからタニカワが入ってきた。

「面談お疲れ様でした。ではこれから、皆さんにはペアで指定の教室へ行ってもらいます。ゲームはそこから始まりますので頑張ってくださいね」

一気に緊張が走った。それと同時に、恐怖とは少し違うナニカを感じた。そうして渡された紙の中には457と書かれていた。カオリと手を繋いで一緒に、457の教室へと向かっていった。

「カオリ、私たちならきっと大丈夫。だから元気だして! ねっ?」

「うん、そうだよね、」

まだ少し様子はおかしいが、とりあえず大丈夫そうだ。ユキはこのゲームをすぐに終わらせてカオリを元気にしてあげようと考えていた。

457の前に着き、一息ついてから教室のドアを開けた。するとそこには、ユキの母親と思われる人が目を隠された状態で縛られて横たわっていた。そして隣には1000万はあるであろう、大量の札束が置かれていて、まるで2つが天秤にかけられているように見えた。

「えっ…うそ…」

あまりのことに言葉を失ってしまった。

「はいはい2人とも、ちゅうも〜く!」

母親と大金の衝撃のあまり、そこから目を離せなかった2人は教室の後ろのドア越しにいた謎の男に気づかなかった。

「この人は眠っているだけだから安心してね?では今から、ゲームの内容を説明していきま〜す。チミ達には3つのゲームをしてもらうよ〜。それらをクリアできたら、解放してあげるよ。もう気づいてると思うけど、ただのゲームではないからねっ。無論逃げることも許されないからね〜。じゃあまず1つ目のゲームは、ユキの母と現金1000万、どちらが大切かを2人に同時に答えてもらおう。答えが一致したら一致した方をプレゼント。もし意見が分かれたりなんてことがあったら、、、両方燃やす。ルールは以上だよ。そこにあるボードを使って答えを書いてね!相談はしちゃあダメだよ〜。制限時間は3分!よぉいスタート!」

(カオリも私のお母さんのことは知ってるしこんなの意見が分かれるわけがない。絶対にお母さんを選んでくれるに決まってる!)ユキはそう信じてすぐボードに『お母さん』と書き、ボードを伏せた。カオリも少ししてからボードに文字を書いた。

3分が経った。母が心配なユキはずっと眠っている母を見ていた。カオリはというと、ずっと下を向いたままだった。

「はい終了〜。では一斉にボードを見せてくださ〜い!どうぞ!」

ボードを表にした瞬間、空気が凍った。全身の血の気が引いた。そんなわけない、そんなはずがない、そう思いながらもう一度カオリの手元をゆっくりと見てみた。しかし何度見てもそこには、『1000万』と書かれているボードしかだった。

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