所詮友情されど友情
ひらひら
第1話 クラス替え
「ごめんね…こうするしかなかったの、、、」
雪も解け、冷たい風も段々と心地よくなり、春の訪れを感じさせるような朝、
「今日から学校かぁ」
「ちゃんと朝ごはんは食べてから行くのよ」
「分かってるよ!行ってきます!」
母とはそんな会話だけして家を出た。私は今、青海高校の3年生。今年は受験生だ。(あんまり実感無いなぁ、あと1年で卒業か。受験嫌だなぁぁぁ。)
そんなことを考えながら徒歩20分の学校へと重い足を動かしてノコノコと歩いていった。
「ユキっ!おはよーーう!!久しぶりだねぇ」
校門前あたりで、友達のカオリがユキの後ろから思い切り飛びついてきた。
「うわっ!びっくりした〜。カオリおはよぉ。相変わらず元気だなぁ」
「当たり前じゃん!今日から私たち、3年生だよ!最高学年!テンション上がるわぁ!!やっぱり中学の時の3年とは違う何かを感じるんだよねっ、うんうん」
「何を言ってんだか…また受験勉強が始まるだけじゃん。絶対大変だよ〜?じゃあ、私こっちだから。バイバイ!」
他愛のない会話をしながら教室に着いた。
カオリは、小学校の頃からの数少ない友達の一人だ。いつも元気いっぱいで明るいので、男子からの評判もいいらしい。いわば陽キャ。ユキの正反対。どうして彼女と仲良くなったかなんて覚えていないが、普通なら絶対に仲良くなれないタイプの類だ。小学校からクラスが同じになることはほとんどなかったが、部活動に入っていないユキたちは下校時は大体一緒に帰る。
始めはやっぱり動揺してしまい何を話せばいいのかも分からず、カオリの性格に少々疲れていたが、今では同じクラスになりたいと思っているほど彼女のことを「友達」だと思っている自分がいた。
_キーンコーンカーンコーン__
チャイムの音と共に先生が教室に入ってきた。
「皆さんおはようございます。春休みは楽しく過ごせましたか?早速ですが、3年生のクラスを発表します。1人に1枚ずつ紙を配るので、書かれている番号の教室に行ってください」
そう言われて配られた紙の中には、459と書いていた。この学校には4階なんてものはなかったはずだ。先生の書き間違いかな、
「先生、459て書いてあるのですが、どこにありますか?」
「459はB1階です。階段を降りてすぐ右にありますよ」
(ここって地下あったんだ、なんだか不気味だな。誰か同じクラスの人いないかな。あ、そういえばカオリはクラスどこだったんだろう。)色々考えながら階段を降り、ゆっくりと教室へ向かっていった。地上と比べて周りは暗く、床や壁にはカッターで切った跡があり、不気味という言葉の他なかった。知っている人がいなかったら気まずいと思って、教室の後ろからゆっくりドアを開けて入ると、そこには小汚い机と椅子が8脚ずつしかなく、クラスの人数とはかけ離れた少なさだった。私の他には男子が5人と女子2人がいた。そのうちの4人の男子が2人ずつペアになって話しており、男子1人と女子1人が一緒に話していた。
すると、前の方で立っていた女子がこちらに向かってきた。
「ユキ!!良かったぁ同じクラスで!こんな少ない人数友達いなかったらどうしようかと思ってたよ!ていうか地下があったの2年間この学校いて初めて知ったんだけど!(笑)」
「そうだよね。地下なんてあったかな、ちょっと怖いよ」
地下なので窓はあっても外が暗く、空気が悪いこの教室で待っていたので気がつけば全身に鳥肌が立っていた。
しばらくすると、先生らしき人が教室の中に入ってきた。
「皆さんおはようございます。私はタニカワと言います。聞きたいことはあると思いますが、まず始めに、君たち8人には簡単なゲームに参加してもらいます。隣にいる人とペアになって参加してくださいね」
おそらく、仲のいいペアが4組集められているのだろう。
「簡単なゲームってなんなんすか?」
やんちゃそうな男子生徒が不満そうな顔をしながら質問した。
「ちょっとした『友情』を見せてもらいたくてね」
「こんなところでする必要なくない?運動場とかじゃダメだったわけ?」
「こらアカネ。確かにそうだけど俺たちならこんなゲーム楽勝なんだからなんでもいいじゃん。な?」
「まぁ、それもそうね」
カップルなのか親友なのか分からない男女がそう語り合う。
「ではこれより、1人ずつ私と面談をしていきます。呼ばれた人から順番に隣の教室458にくるように。まずは、カオリさん。こちらへ」
「え〜!私から?一番最初は緊張するなぁ!じゃあユキ!呼ばれたし行ってくるね〜!」
そう言うとカオリはタニカワと一緒に隣の教室へと入っていった。(どんな話をしているのだろうか。私達受験生だし本当は進路のことについて話しているだけなのではないのか。それとももしかして…。)気が気でなかった。
何分経っただろうか、時計がないので分からないが20分くらい経った時に教室の後ろのドアがゆっくりと開く音がした。するとそこには、涙を零しながら青ざめた顔をしている、さっきとは全くの別人であるカオリが立っていた。
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