Q4 『アンサー』は誰? 8
言葉として理解できたのはそこまでだった。あとは、脳の中に生の情報が、無理やり展開されていった。
オラクルの持つ『異能力』技術を人類が正しく使えるかのテストであること。
テストの内容は、『異能力早押しクイズ』であること。自身の知能と『異能力』を使って、早押しクイズで競う。
参加者はここにいる26人、それぞれ異なる『異能力』を与えられていること。
勝利条件は、クイズで勝ち続けること、及び『異能力』を他人に知られないこと。クイズに負けるか、他の参加者に自分の『異能力』を指摘される、または他の参加者の『異能力』を指摘して間違えた場合は、死ぬこと。
最後に残った参加者だけが、脱出できること。
僕は脳にかけられる異様な負荷を感じながらも、この感覚にどこか覚えがあった。これは、『テレパス』で直接会話している時と同じ感覚だ。説明の内容もあわせて、僕の推測は確信に変わった。
オラクルが見せている芸当は、全て『異能力』で説明がつく。先程空間から現れたのも、禅寺ゼンジロウが死体回収に使っていたものと同じ『異能力』だろう。説明の中にあった、オラクルの持つ『異能力』技術とはつまり、オラクルは全ての『異能力』が使えるということだ。
そして、もう一つ。いちばん重要な情報が、この中に隠されている。
【予測より肉体へ負荷がかかっている個体がいますね。仕方ありません。ロスの多い形式ですが、これより先は口頭で説明します】
「質問があるんだけど」
オラクルが説明を始めようとするのを、僕は遮って質問した。
【必要なルールは全て説明したはずですが、公平性のために質疑は受け付けることになっています。どうぞ】
「参加者はここにいる26人って言ったけど……ここには27人いるよね?」
【いいえ、ここには26人しか】
「違う」
僕は1人ずつ指さして人の数を数えてみせたあと、オラクルを指さした。
「お前も含めてここには27人いるよね?」
【いいえ、ここには26人しかいません】
オラクルは平板な調子で繰り返す。やっぱりだ。オラクルはウソがつけない。だから、この言い方しかできない。
人数が1人多くいるように見えるのは、すでに二荒山ララの『ダブルキャスト』が発動して、身代わりができているからだ。だから、「ここにいる26人」とは。
「あそこにいる双子のうち1人は、『異能力』で作った身代わりなんだ。だから、ここにいるのは正確には、僕ら人間25人と、お前だ。なぜ【私は参加者には含まれません】と否定しない?それは、お前が26人目の参加者だからだ」
僕とオラクル以外の参加者全員がどよめく。
「ちょ、ちょっと、アレはこう、デスゲームの主催者的なやつじゃないんですか?!」
マイカがいつもの調子でつっこんでくるので、僕は思わず苦笑してしまう。
「僕らはこんな不可解なシチュエーションで、理解の及ばない存在が現れたから、『あれがデスゲームの主催者側で、自分たちは参加者だ』と思い込んでいたが、違う。アレも参加者の1人だ」
「じゃ、じゃあ主催者は誰なの?」
参加者の1人が叫ぶと、
【このテストを主催しているのはオラクルです】
オラクルはまた感情のない声で返す。
「ああ、そうだろう」
僕はその発言で、もう一つの推理にも確証を得た。全ての根幹に関わる、最大の違和感に対する解答だ。
なぜ、早押しクイズなのか?その答えは。
「オラクルは2人いた!ここにいる参加者側のオラクルが、他のオラクルの主催する知能テストだったこのゲームを乗っ取り、デスゲームに仕立てたんだ!」
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