Q4 『アンサー』は誰?

Q4 『アンサー』は誰? 1


 がらんとした会場に残ったのは、僕、ミラ、Q、リリの4人だけだ。始まったときには26人もいた参加者も、ついにこれだけになってしまった。今はラウンド間の休憩時間だが、もう喋る声も聞こえない。

「いろいろ、気になることはあるけどよ……」

 最初に口を開いたのはミラだった。

「Aは『アンサー』じゃなかったのか?」

「そう、みたいだ。僕もよくわかっていないんだけど」

(じゃあ、なんで答えがわかったんだよ)

(僕にもわからないよ)

 僕は改めて『異能力』の表を見た。


Answer:クイズの答えがわかる。

BAN:指定した参加者の能力を一定時間無効にする。

Counter:他の参加者がボタンを押す行動を予知し、その前にボタンを押すことができる。

Detective:クイズや能力に関する情報以外を、任意に聞き出すことができる。

Erase:クイズの問題文や選択肢の一部を非表示にできる。

Fifty-Fifty:クイズを2択扱いで回答できる。

Genre:問題の出題ジャンルを変更できる。

Holoscope:ラウンドに1回、参加者のうち一人の能力を知ることができる。

Immortal:指摘によって死なない。

Judge:能力の処理やクイズの詳細なルールについて、正確な情報を得ることができる。

Knight:ラウンド不参加時、参加者一人を選び、死亡しないようにできる。

Loop:死亡したとき、クイズをやり直すことができる。

Medium:死んだ参加者の能力がわかる。

Negotiation:ラウンドへの参加やクイズの得点を、交渉により変更できる。

Overwrite:公開されている能力情報のうちひとつを書き換える。

Phone:スマホを持ち込むことができる。

Quarter:クイズをすべて4択にできる。

Remember:自分の記憶を操作し、経験や知識を正確に引き出すことができる。

Stop:ボタンを押した瞬間、60秒間周囲の時間が停止する。

Telepas:条件を満たした相手と、声を出さずに会話をすることができる。

Underdog:最下位が二人以上いる時、クイズで死なない。

Vale:能力の対象となった時、それを感知して偽りの結果を返すことができる。


 この中に僕の『異能力』があり、しかも『アンサー』ではない。だとすると、一体……。

「あれ、えーっと……」

 表をいっしょに見ていたミラが、一行ずつ項目を数え始めた。

「どうしたの?」

「いや、なんか……数が合わない気がして」

 確かにそうだ。残りの参加者が4人ということは、死んだ参加者は22人。開示されている能力は22個。最初に『アンサー』が開示されているのだから、開示されている能力の数は、死んだ参加者の数より1つ多くないとおかしい。

「てことは……マイカが生きてるかもしれねえのか?!」

「あ、そうか……!それなら数が合うかも」

 だとしたら、マイカはどこに?僕は周囲を見渡し、規制線が引かれたままの個室エリアを見た。

「おそらく、あそこだろうね。ただ、探しに行くなら覚悟したほうがいい」

「覚悟?」

 僕が聞き返すと、Qは真剣な顔をしてうなずく。

「……気づいた?死体が消えてないこと」

「え、あ……」

 今まではいつの間にか消えていた死体が、残っている。サクラの死体も、禅寺の死体も。

「これは、ボクの推測だけど……たぶん、今まで死体が消えてたのは、あの禅寺ってやつが何かしてたんじゃないかと思う。だから、マイカちゃんがどうなっていようと、たくさんの死体があるのは覚悟したほうがいい、って話」

 僕はつばを飲み込んだ。

「……でも、行くしか無いよ。行こう」


 果たして僕たちは、禅寺の部屋に詰まった16人分の死体を見た。マイカもそのひとつになっていた。ミラはそれを見るなり吐き戻していた。

「マイカ……」

 彼女の死体は、胸に大きな血のシミができていた。おそらく銃で撃たれたのだろう。だがその手は、胸の血痕を抑えたままではなく、伸ばした状態になっている。僕はそこに少し違和感を覚えた。

 禅寺は、彼女に『ホロスコープ』を使わせたと言っていた。でも、禅寺は能力指摘を間違えた。何があったのか……。ごめんね、と断ってから、その手のひらを見る。


「こ、これは……!」

 マイカの手には確かに『A』と刻まれていた。。手のひらにひっかいたようなキズができていて、それがAの形をとっていたのだ。

「なるほど、これで『ホロスコープ』の結果を偽っていたんだね……頭のリボンに入っていた針金でひっかいたのかな」

 Qがマイカの死体をのぞきこむ。僕はマイカの頭を抱える仕草を思い出した。フリフリの服の形を整えるために入っていた針金。ここまでしっかりと刻むためには、相当痛い思いをしただろう。

「……『アンサー』って偽ってるってことは。僕の本当の能力を占っていたかもしれない。そうしないと確実に偽ることもできないんだから」

 ちらりとQを見る。

「いいよ、見な。彼女がキミ宛に残したダイイングメッセージみたいなものなんだから」

 僕はうなずいて、マイカの手から血を拭い……そこに書かれた、僕の『異能力』を見た。



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