Q3 「囲碁で石を打っても陣地が増えない場所」を語源とする、無駄なこと・価値がないことを意味する言葉は何? 2

 現在、生き残っている参加者は11人。

 僕とミラとマイカ。Q。大門サクラ以下警察を名乗る4人。双子の子供、リリとララ、それに禅寺ゼンジロウ。この11人だ。最初は26人いた参加者も、ここまで減ってしまった。

 開示されている能力も増えた。


Answer:クイズの答えがわかる。

BAN:指定した参加者の能力を一定時間無効にする。

Counter:他の参加者がボタンを押す行動を予知し、その前にボタンを押すことができる。

Detective:クイズや能力に関する情報以外を、任意に聞き出すことができる。

Erase:クイズの問題文や選択肢の一部を非表示にできる。

Fifty-Fifty:クイズを2択扱いで回答できる。

Genre:問題の出題ジャンルを変更できる。

Holoscope:ラウンドに1回、参加者のうち一人の能力を知ることができる。

Immortal:指摘によって死なない。

Judge:能力の処理やクイズの詳細なルールについて、正確な情報を得ることができる。

Knight:ラウンド不参加時、参加者一人を選び、死亡しないようにできる。

Loop:死亡したとき、クイズをやり直すことができる。

Medium:死んだ参加者の能力がわかる。

Negotiation:ラウンドへの参加やクイズの得点を、交渉により変更できる。

Overwrite:公開されている能力情報のうちひとつを書き換える。

Phone:スマホを持ち込むことができる。


 このうち、『イレイズ』・『カウンター』・『フォーン』、そして公開されてはいないが『ストップ』はすでにいないことがわかっている。そして、前のラウンドの挙動から、警察の4人のうち誰かが『BAN』であることも。これは全員が知っている情報だ。また、おそらく『ジャンル』は、もういない。

 僕だけが知っている情報は、僕が『アンサー』であること、ミラが『テレパス』であること、そしておそらくマイカは『ホロスコープ』であること。



「我々のプランは単純です。最初に誰かが言っていた必勝法に近いかもしれません」

 ラウンドの合間、サクラが僕たち――僕・ミラ・マイカを呼び出して話し始めた。周囲に他の警察を名乗るメンバーはいない。

「端的に言って、『時間稼ぎをして、助けを待つ』。それが我々の主な脱出プランです」

「そ、その。本当に助けなんて来るんですか?」

「来ます」

 不安そうなマイカに、サクラが断言する。

「これを見てください」

 サクラが取り出したのは、スマホだった。

「えっ?!うそっ、なんで?」

「桔梗の能力『フォーン』は、スマートフォンを持ち込める能力です。そこに個数制限はなかったようです。桔梗はこういうのが好きで、から、我々には全員分のスマートフォンがあります。そして、ここ」

 あっけにとられる僕ら3人をよそに、サクラは画面を指さした。

「電波が通じています。普段通り、普通にインターネットにアクセスできますし、電話もできます」

「そ、そうか……画像検索ができたのも、そういうわけか」

 僕は桔梗たちと対戦したラウンドを思い返していた。スマホが持ち込めるだけでは画像検索はできないだろう。

「私達の普通のスマホで、電波が通じる……ということは、ここは私達の住んでいる場所や時間と同一であるということです。空腹や排泄欲がないので、何らかの影響で外部と時間がずれているのかも、とも思っていましたが、そうではない。私達は、現代日本のどこかに、隔離されている。これは確かです」

 なかなか衝撃的な情報だった。僕らはそんなこと考えている余裕もなかったし、オラクルの超能力や、この無限に広がっていそうな空間を見たせいで、異空間に閉じ込められているものだと、なんとなく思っていた。

「私達は外部と連絡が取れています。位置の座標もすでに送付済です。ですから、いずれ助けに来るはずです」

 サクラの表情は変化に乏しいが、言葉は自信にあふれていた。なにより、スマホという、僕たちの日常に結びつくものが……そして、ネットという連絡手段を見せられ、僕は彼女の話を信じたくなった。

「あんたがマジで言ってるのはわかった。けどよ、3つ気に入らねえところがある」

 ミラがピンクの髪をいじりながら、サクラを睨んだ。

「1つ。なんで今まで黙ってたんだ?もっと早くこうしていれば、死ななくてすんだヤツだって、殺さなくてすんだヤツだっていただろ!」

「……それについては、申し訳なく思っています。私達も、守るべき国民を……ゲームの結果とはいえ、手にかけてしまったことは、重く受け止めています」

 サクラは目を伏せる。

「今まで動けなかったのは、人数が多く不確定要素が多かったからです。特に、Qの行動と卓越したクイズ力とカリスマ性は脅威でした。Qの党派が先程のラウンドでいなくなり、彼以外の全員に協力を持ちかけられるようになって、初めて表立って動くことができました」

「機会を伺ってたってわけか……」

「さ、最初のほうとか、みんなものすごく混乱してましたし、話しを聞く状態じゃなかったと思います……」

 これも一応、筋は通る内容だ。自分たちだけ有利な情報を掴んでいたのだから、もっとなんとかできなかったのか、と思いはするが、さらなる恐慌を招いただけのような気もする。ミラは続ける。

「2つ。そのプランでなんで『アンサー』とQを倒す必要がある?あんたのいう『守るべき国民』に入らねえのか?」

 サクラは少し考えてから、声を潜めて返した。

「おそらく、あなたの気に入らない3つ目は、『待っているだけってのが気に食わない』ですよね」

「……?まあ、そうだけど」

「でしたら、これはその両方の答えになるでしょう」

 サクラは僕らに顔を寄せ、周囲の視線を伺う。

「……私達は、Qか『アンサー』、あるいはその両方が、だと考えています。だから、排除しなければならないのです」

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