Q2 漫画家、桜井のりおの作品で、三つ子の『みつば』『ふたば』『ひとは』を主人公とするギャグマンガは何? 12

◆◆


 飯島イサムは、お世辞にも頭が良いとは言えない男だった。彼は自分でもそれを自覚していて、あまり頭を使わない生き方をしていた。だが、「誰についていけばいいか」に対する嗅覚だけは、自信があった。

 早押しクイズという、頭を使うものの代表で生死が決まるゲームに巻き込まれたときは、すぐに死ぬものと思っていたが――。

 

【問題。日本三景とは、】

「天橋立」


 Qという圧倒的なクイズ強者を見つけ、彼についていくことにした。もし彼に利用され、だまされて死んだとしても、一人でやってもすぐに死ぬのだから、結果的には変わらない。そう思っていたが、意外にもQはイサムに好意的で、いろいろと戦い方を教えてくれた。

 

「キミの『イレイズ』は、『BAN』と並んで数少ない妨害能力だ。ここぞというときに取っておくのがいいね……警戒されると面倒だし」


「今までの問題からして、全員が解けないような問題は出ていない。わからなくても焦って押さないで、ゆっくり聞けば後振りでわかることもあるよ」


 Qの協力もあって、イサムは最初のラウンドをなんとか突破。そして今、同じくQの取り巻きの宮本とチームを組んで、クイズに挑んでいる。

 追い込まれて思わず『イレイズ』を使ってしまったイサムだったが、彼には妨害前の問題と選択肢が見えても、答えがわからない。

(やっぱりオレはアホだ、こんなことしても意味がない)

 後悔しかけたその時、チームの宮本がなんと正解した。これにはQも、イサムも大喜びだった。


「宮本サン、すげえっすよ!これなら勝てる!」


 イサムが『イレイズ』で妨害し、宮本がゆっくりと考えて正解する。このパターンで、最後の1問をとれば勝てる。。クイズで最強のQに、宮本もここまで強ければ、この人たちについていけば負けないだろう。イサムは、改めて自分の嗅覚に自信を持った。


【問題。】


 イサムは勝利を確信して、『イレイズ』を起動する。これで表示される選択肢がおかしくなって――。

 

「なっ」


 というより、普段ならわかる書き換えの結果もわからない。『イレイズ』が発動していない。 

 

 何が起こっている?イサムは選択肢を映していた空間から、周囲に視線を巡らせる。


 クイズの解答者を取り囲むようにいる、他の参加者の中。そして、解答席の対面。4人の参加者が、イサムを指さしている。


 半蔵モンヂ。平川ホウゾウ。乾イヴァン。大門サクラ。


 親指と人差指で、銃をつくるようにして、イサムを標的にしていた。


 ◆◆


「『能力指摘』だ」


 くぐもった声のする方を見る。解答席の半蔵と平川が、飯島を指さしている。僕の隣でクイズを見ていた長身の女性も。他にも一人、外国人っぽい顔の男性が同じようにしている。全員が、指先で銃をまねるみたいにして、飯島に向けていた。


「ほんとはよぉ~……『アンサー』も釣れりゃあ一石二鳥だとおもってたんだがなぁ~~……ここまで隠してきただけあって用心深いぜ……飯島イサム、オメーと違ってな……」

「な、なんだよこれっ!」


 当の飯島は混乱している。当然だろう。『イレイズ』が使えなくなったのだから。

「『BAN』か。ここで動いてくるとは。悪い予想が当たった」

 Qは珍しく真剣な表情で行方を見守っている。


「ここまでアホみたいな挑発に乗ってやった甲斐はあったぜぇ~~……フツーに4択解いてれば勝てたかもしれないのになぁ~~?」


「お、お前、『フィフティ・フィフティ』じゃ……や、やめろおっっ!」


 半蔵は勝ち誇り、飯島を見下ろして言った。


「飯島イサム。お前の能力は『イレイズ』だ。マヌケさ加減をあの世で反省しなぁ~~ッ!」


 ピンポーン!


 空虚な正解音が鳴り、飯島の頭が弾け飛んだ。

 宮本の顔と上品な服に、べったりと血の跡がつく。

 少しの静寂のあと、彼女の悲鳴が会場に響いた。



 その後、最後の問題……【次の4つの記号のうち、一般的に海外のテレビゲームで決定を意味するボタンはどれ?】を半蔵が正答。5-5で延長戦になったが、もはや宮本に戦う気力は残っていなかった。

 ラウンド10は半蔵・平川チームの勝利で終わり、2人の参加者が減った。


「……ひでえ野郎だ。これから死ぬやつをあんなにボロクソに言って……」

 ラウンドが終わり、生き残った半蔵と平川が席を降りてくる。誰もが言葉を飲み込む中、ミラの絞り出すような声が聞こえる。

「あ?なんだぁこのガキ……」

 半蔵がミラに近づいてきた。僕は2人の間に入ろうとするが、それより速く、誰かが割り込んできた。


「半蔵」


 聞いただけで背筋が凍るような冷たい声。ミラの前に立ったのは、先程飯島を指さしていた長身の女性だ。改めて見ると、肌が異様に白い。


「な、なんだよボス、ちょっとテンション上がっただけ」


 彼の言葉を最後まで聞くことなく、女性は長い脚で半蔵の顔を蹴り上げた。

「グアッ!?」

 巨体がわずかに宙に浮き、崩れ落ちる。倒れ伏した半蔵をヒールで踏みながら、女性は他の参加者を見回した。


「お見苦しいものを、大変失礼しました。お詫びいたします。彼の言動は我々の総意とは一部異なるものです。今後は慎ませます」


「……なんなんですか、あなたは」

 展開に頭が追いつかない僕は、思わず聞いてしまう。女性は踏みつけにしたまま、僕を見下ろして答えた。


「私は大門サクラ。。半蔵モンヂ・平川ホウゾウ・乾イヴァン……そして、桔梗ユカリとともに、我々警察はこのテストから国民を保護するために潜入しました」


 桔梗ユカリ。その名前を聞いて、僕の心臓が跳ねる。


「我々は国民の保護を最優先に行動します。半蔵の言動は任務の遂行のためとはいえ、過度に他参加者を侮辱するものでした。我々の総意ではありません。改めて謝罪いたします」


 淡々と、整った唇で、原稿でも読み上げるように告げる大門サクラ。


「け、警察が来てくれた!」

「リリたち、おうちに帰れるの!?」


 僕らとQ、そして警察と名乗った4人以外の生き残りが色めきだつ。色黒の青年、禅寺ゼンジロウと、双子の子ども、二荒山リリとララ。もう参加者もだいぶ少なくなってしまったが、そのうち4人が同じ組織の人間だったとは。


「ええ、私たちは全力を尽くします」


 サクラはにっこりと笑った。人を安心させるために最適化された笑み。これも警察のスキルなのだろうか。


「……国民の保護とかいう割りに、ずいぶん容赦なく殺したよね。宮本さんとは、クイズで対戦したかったのに……」


 恨めしそうなQの言葉に、サクラは返す。


「未だにここから脱出するプランが立っておらず、クイズが続いているのは我々の力不足です。そして、あなたをまだ野放しにしていることも」

「……どういう意味?」


 Qの質問に答えず、彼女は僕ら残りの参加者を見回した。


「皆さん!」


 空間が、びりっと揺れるような大音声だ。


「我々は、この理不尽なクイズの裏で調査を行い、脱出のプランを立ててきました。皆さんには、ぜひとも協力していただきたい!共にこのデスゲームから生還するためには……」


 サクラと、目が合った。


Q!」



Q2 漫画家、桜井のりおの作品で、三つ子の『みつば』『ふたば』『ひとは』を主人公とするギャグマンガは何?

A2 『みつどもえ』

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