Q2 漫画家、桜井のりおの作品で、三つ子の『みつば』『ふたば』『ひとは』を主人公とするギャグマンガは何? 7
「さっきの延長戦で……僕らは他の人よりずっと多くのクイズを解けた。だから、パターンがわかった」
熾烈な延長戦の間、僕らと須藤・桔梗チームは、互いにほぼ最速でクイズに答え続けた。少なくとも僕はそう思っている。その結果、僕はクイズというゲームの性質に……パターンに近づけた。
「あの二人のおかげで気づけたんだな。じゃあ、なんとしてもこのヒントを使って生き残らないと」
「うん」
神妙な顔をするマイカに、僕は説明を始めようとする。
「まず、問題文には大きく3つのパターンがあって……」
その時。
「ね、ねえ大変ですよ!」
マイカが部屋に飛び込んできた。彼女もラウンド9以降ふさぎ込んでいたが、少しは調子を取り戻したのかもしれない。荒い息を鎮めながら、マイカは言葉を絞り出した。
「Qが、全員にクイズの解き方を教えるって……!」
先ほどまでクイズをしていた会場に行くと、Qが壇上に立っていた。相変わらずの笑顔で、僕たちを含め他の参加者たちを見回している。
「やあ、ごめんね。疲れてるのに」
僕らが後から来たのに気が付くと、Qはにこやかに手を振った。
「でも、これは全員に聞いておいてほしいんだよね。せっかくクイズをやるんだから」
12人の参加者たちは、不可解な展開に顔を見合わせている。
「なんかキメーよな!俺たちに解き方を教えて、お前になんのメリットがあんだよ!」
大声でQに言ったのは、太った男の参加者……確か半蔵モンヂと言ったか。威圧的な言葉も、Qは意に介さず飄々と返す。
「メリット?ないけど。別にボクがこれを教えようと教えまいと、みんなはボクにクイズで勝てないから、関係ないんだよね。しいて言えば、みんながクイズに詳しくなってくれて、ちょっとはいいゲームができたらいいなって!」
「はあぁ?なんだそりゃ!」
「まあとりあえず聞いてよ!メリットといえば君たちには山盛りなわけだし……クイズに勝ちやすくなるし、これをマスターすれば『アンサー』だって見破りやすくなるよ?」
参加者にざわめきが広がる。
「それとも……キミは『アンサー』だから反対してるってわけ?」
Qがいたずらっぽく笑うと、半蔵は激しく首を横に振った。
「な、んなわけあるか!変な野郎だな」
大男が口ごもり、Qは説明をし始める。
「まずね、クイズっていうのは知識を競うゲームなんだ。だから、知識があるほうが有利になるように、いろんなお約束があるんだよね」
クイズ王というだけあって、説明も慣れているようだった。
「例えば、【日本で一番高い山は何?】これはみんな知ってる。富士山だよね。だから、これで早押しをやっても、知識で差がつかない。でもこうだったらどうかな?【1707年に噴火し、当時は江戸にまで火山灰が降ったとされる火山は?】これだったら、歴史に詳しい人だけがわかって、知識で差が出るよね」
そうだ。前半が難しく、後半が簡単。僕があのラウンドを切り抜けて見つけたパターンの一つだ。
「だから、問題文はこうやって作られる。【1707年に噴火し、当時は江戸にまで火山灰が降ったとされる火山で、日本で一番高い山は何?】歴史に詳しかったら、前半部分でわかって早押しできる!おめでとう!でも、わからなくても後半まで待てば、みんな知ってるから回答できるね。これがいわゆる、前振り・後振りの形式だ。知っていれば、【1707年に噴火し】ぐらいで答えてもいいかもしれないねえ」
僕がやっと見つけることができた法則が、わかりやすく解説されていく。
「次に、列挙するタイプの問題。【ウガンダ・マサイ・アミメといえば、なんの動物の名前?】わかる人?」
「……キリンね」
僕の隣で、背の高いスーツの女性が答える。
「正解!ウガンダとかマサイだけじゃわかんないけど、アミメキリンだったら動物園で見たことある人もいるんじゃないかな?これもさっきの問題と同じで、前ほど難しくて後ほど簡単なんだね。お姉さんなかなか物知りだね」
「……どうも」
スーツの女性は表情を全く変えない。
「似たような形で、命数問題っていうのもあるね。【日本三景といえば、松島、宮島と何?】っていうような。三景は3つしかないから、最初の2つを聞けばいいんだけど……」
【時間です。ラウンド10を開始します】
オラクルのアナウンスが響く。また、死のクイズが始まってしまう。
「じゃ、ここから先は、実際にやりながら見せようか」
Qは屈託のない笑顔でそう言った。
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