Q2 漫画家、桜井のりおの作品で、三つ子の『みつば』『ふたば』『ひとは』を主人公とするギャグマンガは何? 5
「Aさんがこんなにがんばってるのに、私が何もしないんじゃ、ダメですよね」
マイカは自分に言い聞かせるように言った。
「でも、それは」
僕が返すと、マイカは首を振る。
「いいんです。今までいろいろな理由をつけて、『異能力』を使うのを避けてたけど。私も、できることはやります」
「……わかった」
クイズ力が完全に互角なら、相手の『異能力』を暴いて指摘殺するしかない。それは、自分の意思で人を殺す、ということだ。マイカは僕を信頼して自分の『異能力』を明かす上に、その覚悟を決めたのだろう。だったら、僕も答えなければならない。
僕は目を閉じ、もう一度脳内で考えをまとめた。これならいけるはずだ。
マイカの能力は『
チャンスは一度きり。
「対象は……須藤だ」
マイカが小さくうなずき、手をにぎって、開く。
『Stop』
手のひらには、先ほどまでなかった文字が浮かび上がっていた。
「ありがとう。これで、つながった」
僕は対面の回答席を見つめ、腕をまっすぐ伸ばして指をさす。自分の指先が小さく震えているのが見える。
「『能力指摘』」
会場の空気が凍り付いた。この瞬間、どちらかが死ぬことが確定したからだ。クイズの出題も停止した。
「え、ほ、本当に?!なんで?!」
須藤がうろたえる。
「……Aくん。やめるなら今のうちっすよ」
桔梗の方は、やけに落ち着いた様子で、僕のことを見る。
「やめません」
「外したら死ぬの、わかってるっすか?」
「はい」
「そうっすか……だったら、その前に聞かせてほしいっす。君の推理を」
桔梗がそんなことを言い出して、僕らも、須藤も目を見開く。
「なっ、なんでそんなこと?!あんたバカなの?!それより先にあっちの『異能力』を指摘すれば……」
「まぁ、それはそうなんっすけどね。ウチらはここまで、相手の『異能力』を絞りきれなかった。当てずっぽうで指摘し返してもいいっすけど……でも、あんな子供たちが、先に命を張る決断したんっすよ。それには応えるのがスジってもんでしょう」
意外な展開だった。『能力指摘』を返してくるようであれば、先に指摘してしまうつもりだったが……。
「……Aさん、これって……」
マイカが僕を見上げてくる。わかっている。桔梗はただ譲歩してるのではない。僕に喋らせて、情報を吐かせるつもりだ。ミスがあれば、僕だって次のラウンド以降ただではすまないだろう。それに、推理中に最も大きな手がかりになったマイカの『異能力』を言うわけにもいかない。推理なんて言わないで、さっさと指摘してしまえばいい。
だとしても。
「……わかった」
互いに命を張っている。だから、その提案を断るわけにはいかなかった。
「僕らは延長戦前最後の問題で、ほぼ同時に押していたけど、そこは適切ではなかった。さっきの誤答した問題もそうだ。そちらのチームに起こっている
僕は話し始めた。会場の空間には、何も反響しない。
「そうすると……4ヒントクイズの早押しに違和感が出てくる。特に絵画の問題は、明らかに知っていたからでは済まない速さだった。考えたってあの情報ではわからないだろう。でも正解しているということは、あの時点で解答に必要な情報が揃っていたということだ」
「な、なにいってるのよ!あれは……」
「いいから」
反論しようとした須藤を、桔梗が止めた。僕は続ける。
「断片的にでも画像があれば、その全体がわかる。画像から適切な情報を読み取り、自分が知らなくても答えることができる。……つまり、そちらのチームは画像検索を使っている」
「画像検索!?」
「そんな能力があるの?」
「スマホでも持ち込んだっつーのかよ」
周りの参加者たちがざわつく。桔梗の表情は変わらない。
「検索できることを前提にすると、解答の速さにも説明がつく。グーグルかなにかで、読まれた場所までの内容を検索すれば答えは出るだろう。だから、検索してわかるところまでは情報が必要なんだ」
「で、でも、検索なんて、いつ……」
マイカの言葉に、僕はうなずく。
「そう、そこだ。ボタンを押してから、須藤・桔梗チームはすぐに解答している。検索をして、その結果から答えを探しているような時間はない……いつ検索しているんだ?そう考えたときに、ひとつの違和感に気がついたんだ」
「な、なによ違和感って」
須藤の表情に焦りの色がにじむ。
「相手チームのボタンは、いつも須藤さんが押している。解答自体は2人ともしていたけど、ボタン押しはいつも須藤さんだ。そして、ボタンを押した後必ずあるはずのあることが起こっていなかった……ボタンの点灯だ」
「なるほど、確かにそういえば、点いてなかったね」
Qが相変わらずの表情で相槌を入れる。
「なぜボタンが点かないのか?故障ということは考えにくい……もしかしたら、点灯したものが自然に消えていたのかもしれない。そう考えると、さっきの疑問とつながってくる。検索はいつしているのか?ボタンはいつ消えたのか?どっちもいつの問題だ。相手チームにだけ時間があった、と考えると、この疑問はどっちも解消できる。つまり、
「ええ!?ラスボス級じゃないですか!そんな強い『異能力』、もっと上位にあっていいのに……なんで?!」
ザ・ワールドじゃん、とこぼしながら驚くマイカ。それに答えるように、桔梗が言った。
「それよりもっと重大な欠陥があるっすよ。その推理は。それじゃあどうやって時間操作とか時間停止しながら検索したっすか?一人じゃ
確かに、そうだ、と、周囲の参加者たちがささやく。僕は疑いの目が強まるのを感じながら、続けた。
「そう。『異能力』は一人ひとつ。検索ができる参加者は時間停止できないし、時間停止できる参加者は検索できない。この疑問をどう解消するか?そこが問題だった」
「そもそも『時間停止』ってなんだ?時間が止まっているなら自分も止まっているはずだ。自分だけが動けたとして、服や周りの空気はどうなる?止まってたら呼吸できない。自分や自分の所持品だけが停止の例外になるのか。そう考えた時、僕は一つの可能性に思い至った。なにも、『異能力』で検索しなくたっていい」
「ど、どういうことですか?」
「さっき誰かが言っていたように……スマホが一台あれば全部足りる。もう一つの能力は、『スマホ』だ。『時間停止』側に『スマホ』側がスマホを渡して、『時間停止』中にそのスマホで検索すればいい。これが
桔梗はそこまで聞くと、笑って手をたたいた。
「『時間停止』して検索している間にボタンの点灯が切れた。でもボタンの音は持ち物じゃないから聞こえていた……すごいっすね。点灯のことはウチも気が付かなかったっす。まあ、推論が多くてギリギリの線っすけど。合ってるっすよ」
「な、なに肯定してんのよ!ねえ!あっちの『異能力』わかんないの?!ねえ!早くブっ殺さないと!!」
桔梗は、自分の頭をがくがく揺さぶってくる須藤を手で制した。そして、ボタンの影においてあったものを手にとって、掲げる。それはよく見知ったスマートフォンだった。
「ま、マジかよ!?」
「ほんとにスマホが出てきた!?」
ミラや他の参加者たちが声をあげる。
「あと一歩っすよ、名探偵。生還できたら作家にでもなるといいっす……たはは、これウチが言うことになるんすね」
これから殺される人のものとは思えない、桔梗の軽口。僕は促されるまま、改めて2人を指さした。
「……『時間停止』のきっかけになるのがボタンを押すことだとすれば、須藤さんが毎回ボタンを押していたことにも説明がつく。したがって……」
大きく息を吸って、吐く。
「『能力指摘』。須藤ヤスミが『
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