Q2 漫画家、桜井のりおの作品で、三つ子の『みつば』『ふたば』『ひとは』を主人公とするギャグマンガは何? 4

 同点ならば勝敗が決定せず、死者も出ない。ラウンド1でデメキンが持ち出した「必勝法」のせいで、僕はそう思い込んでいた。

しかし、それは根も葉もない嘘だったのだ。今ならばわかる。

 デメキンが自称した能力『ギャランティ《Guarantee》』の頭文字はG。すでにその枠は、おそらく大山の能力だった『ジャンル《Genre》』だと開示されている。

 

 そこからはもう、互角のたたき合いだった。

 

【問題。6面サイコロを2つ振った時、ぞろ目になる確率は】

「1/6」


僕が正解すれば、


【問題。『まだあげそめし】

「『初恋』」


須藤・桔梗チームも取り返す。


【問題。『キツネ』『ドレミソラシド】

「日向坂46」

【問題。併殺、重殺とも】

「ダブルプレー」

【問題。あかい・まるい・お】

「あまおう」

【問題。世界で一番長い川はナイル川ですが、日本】

「信濃川」

【問題。専用のしょうゆが発売されたことでも話題になった、TKG】

「卵かけご飯」

【問題。フィギュアスケートのジャンプのうち、唯一前】

「アクセル」

【問題。享保の改革を】

「徳川吉宗」

【問題。水を電気分解すると発生するのは、す】

「酸素」

【問題。赤外線を感知するピット器官】

「蛇」

【問題。ラテン語で「商売】

「メルカリ」

【問題。ある物体を構成する要素がすべて置き換えられた】

「テセウスの船」


 決着がつかない。いや、つけることができない。相手チームの相互作用コンボに、Qから伝授されたらしいクイズの解き方が合わさって、僕の『アンサー』とほぼ同等になっているのだ。

 そしてその状態は、延長戦においては『アンサー』より強い。僕は答えがわかっているからといって、で押すことはできない。通常のラウンドであれば、勝ち切ってしまえば問題に答えなくて良いが、延長戦では2問差がつくまで延々と答えさせられ、判断を迫られる。

 問題数を重ね、こちらが『アンサー』だという証拠がそろえば、指摘殺は免れ得ない。

 

「ぐっ……」


 頭が痛い。喉がひりつく。死のリスクを抱えたまま、最大限の集中を保ったままクイズを解き続け、脳が悲鳴をあげている。足がもつれ、倒れそうになる。

「Aさん!」

 マイカが僕の肩を支えた。

「あ、ありがとう……大丈夫」

「大丈夫じゃないですよ!足ががくがくしてるし、鼻血だって……」

 僕のシャツにいつの間にかドス黒い血がついていた。抱き止めてくれたマイカの服のフリルにも、べたりと血がついた。

「わ、私のせいで、こんな……きっと何か強い『異能力』の副作用で……」

 そんな漫画みたいな副作用はないと思うが、『アンサー』がバレないようにするために考える量が2倍になっているのは、副作用と言えるのかもしれない。


「え、Aさん……なんで私のこと怒らないんですか?私が勝手にまちがえたせいで、こんなことになってるのに……なんでそんなに頑張れるんですか?!Aさんは何も悪くないのに、怒ったって、殴ったって、ヤケになってなげだしたっていいのに!」


 熱をもってふらつく頭の中で、そう言われれば、と僕は考える。僕はなんでこんな、わけのわからないゲームに、真剣になっているのだろう。

 自分の命がかかっているから。好きな女の子と生還したいから。もちろんそれはある。だけど、一番は――。


。このまま解き続ければ、僕の命も、君の命も守れる。だからやる。そのための『異能力』もある」


 そうだ。やれるからやる。諦めない。僕は諦めたくないんだ。


【問題。4ヒントクイズです。次のヒントから連想される鳥は何?】


 相手チームの得意な形式のクイズが、ここにきて出される。現在、1問リードされているので、ここで正解されればおしまいだ。

 僕は画像の出る場所を凝視する。何かヒントが出た瞬間に、押す。かなり能力がバレるリスクが高いが、もうやるしかない。そういう状況に追い込まれていた。


 画像が、公開される。僕と須藤が同時に動いた。


 ピコーン!


 音は、対面から。僕は押し負けた。

 終わりだ。結局あの2人の能力を暴くことはできなかった。あとは「ホトトギス」という答えが聞こえて……。


「カッコウ」

 

 ブブーッ。不正解の音だ。


「なッ!?」「ええーっ!?」

 桔梗と須藤は当然驚いている。改めて見れば、ヒントの画像で表示されているのは、「郭公」という漢字だ。なぜだ?答えは「ホトトギス」なのに?!


 その瞬間、僕の中で、いくつもの要素がつながった。能力表、相手チームの行動や、目に映るものに覚えていた違和感。


「……Aさん?」


 急に口を抑え、黙り込んだ僕をマイカが覗き込んできた。


「相手の2人の能力が、わかったかもしれない。でも、どっちがどっちか……」


 どんな相互作用コンボをしているのかがわかっても、指摘殺するには誰がどんな能力を持っているのか指摘する必要がある。僕とミラが組んでいる理由の裏返しだ。相互作用コンボなら、起こっている現象の解明と、能力指摘を結びつかなくできるのだ。


「あと、少しなのに……!」


 思わず歯を食いしばる。そんな僕を見て、マイカは少しうつむいてから、そして強い意志の籠もった目で僕を見つめて、言った。


「どっちかの『異能力』がわかれば、勝てますか」


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