Q1 紙のサイズ、電流の単位、トランプの1の札に共通するアルファベットは何? 10
残りの3問も、天上キュウ……クイズ王Qが連取した。もうジャンルが偏ることはなかった。『異能力』に制限があったのか、大山の心が折れたのか。僕が知ることはできない。
【問題。漢字では、大きい口のさ】
「タラ」
正解。
【問題。サイコロの目の数字をすべてた】
「720」
正解。
【問題。日本三景とは、】
「天橋立」
正解。
ラウンド終了のアナウンスよりも早く、大山が目を血走らせ、Qに掴みかかる。ミラを看てくれたときの、あの優しそうな目の面影はない。
「お、おかしい!最後のなんてまだ3択じゃない!お前が『アンサー』だ!じゃなきゃあんな」
ブッブー。空虚な不正解の音。大山の頭が、水風船みたいに破裂した。肉片が口に入った気がして、吐き気を堪える。
最後、彼女の口が、誰かの名前を呼ぶように動いた気がした。その内容を確かめることは、もうできない。
「やあ、ごめんね。勝ち抜け確定なのに、つい押しちゃって。でも、負けてから能力を指摘するのは、いいプレイングだ!どっちみちもう死ぬんだしね」
Qはへらへら笑いながら死体をどけ、血がついたままの手で僕の肩を叩いた。
「君、Aだっけ。いい押しだったよ!判断力も知識量もある」
「……どうも」
怒り。安心。恐怖。ないまぜになって、僕の口からはぶっきらぼうな反応が出た。Qは笑顔を崩さないまま、何気ない調子で続ける。
「それとも、答えを知ってた、とか?」
背筋が凍る。まさか、すでに僕が『アンサー』だと気づいているのか?まだ僕は3問しか答えていない、それもそこまでおかしな答え方はしていないはずだ。そのわずかな情報でも、「クイズ王」ならば見抜けるのか?
【ラウンド2、勝者は天上キュウ。敗者死亡のためデスペナルティはなし。続いてラウンド3。解答者は前へ】
オラクルのアナウンスが響く。回答席に向かうミラと目が合った。無機質で真っ白な空間に、ピンクの髪が目立つ。
(能力バレてんじゃん!当てられて死んだらどうすんだよ。あたしにガチでクイズやれっての?)
会話が聞こえたのか、ミラがテンパっているのがわかる。Qと話していて気が付かなかったが、いつの間にか『テレパス』の回線がつながっていたようだ。
(落ち着いて。外したら死ぬんだし、まだ当ててこないよ)
(Aこそよくそんな落ち着いて……いや、違うな。ごめん。さっきの大山って人と、Aは直に話してたんだもんな)
僕は振り返る。すでに大山の死体はない。ラウンド1のときも、その後京橋キョウカが死んだときもそうだった。テストの進行に必要ないものはきれいに掃除され、回答席が用意される。僕は歯ぎしりをした。
(……今は、どうやったら生き残れるかを考えよう)
(そうだな。しかし、クイズの答えがわかるってのに、こんなに厳しい状況になるなんてな)
僕だってそう思う。早く押さなきゃ答えられなくて死ぬし、早く押しすぎても能力がバレて死ぬ。本当に厄介だ。
(次の答えは、フッ素、だ。でも押さなくていい)
(なんで)
(問題を聞きたい。今は情報が欲しいんだ。Qの早押しは能力か、技術か。まずはそれを解明しないと、僕らに勝ち目はない)
【問題】
ミラがボタンに指を置き、僕は耳を澄ました。
――つづく
Q1 紙のサイズ、電流の単位、トランプの1の札に共通するアルファベットは何?
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