Q1 紙のサイズ、電流の単位、トランプの1の札に共通するアルファベットは何? 6

 参加者たちの前で、二人の男の頭が爆発した。誰が見ても明らかに死んだとわかる方法で、殺された。

 悲鳴をあげる者、死体を見て吐き戻す者、気を失う者。僕はといえば、凍りついたように動けず、声を出すこともできずにいた。

「マジで死ぬのかよっ……こんなことで……!」

 ミラはうずくまりながら、嗚咽している。デスゲームものに詳しかったマイカも、赤ん坊のように泣きわめいていた。

 無機質でどこまでも続くような空間は、僕たち参加者の声を虚しく響かせる。

【参加者が2人敗退したため、『異能力』リストが2段階開示されます】


 抑揚のないオラクルの声。同時に、空間に浮かんでいた「アンサー」の下に、文字列が表示される。何もできないでいた僕の視界に、その内容はいやでも入ってきた。


A:Answer クイズの答えがわかる。

B:BAN  指定した参加者の能力を一定時間無効にする。

C:Counter 他の参加者がボタンを押す行動を予知し、その前にボタンを押すことができる。


「か、『カウンターCounter』……!?」

 

 必ず他の回答者より先に回答できる、と書いてある。強力な能力だ。そして、「他の参加者がボタンを押すのを予知」できるのであれば、説明のつく事柄が一つある。


「っひいっっ!!」


 怯えきった声が聞こえた。死んだ参加者、郡司タロウに殴られ、顔を腫らした女。ラウンド1の勝者、京橋キョウコだ。


「ち、違うっ!私じゃ、私じゃないっ!!」


 後退りしながら叫ぶが、その行動自体が答え合わせになっていることは明白だ。他の参加者たちも気づき始める。


「さっき『あいつが押した』とか言ってたよな?それって、この『カウンター』の説明そのまんまじゃねえか?」

「デメキンが押すのを予知したから、押されないように自分で押したってことかよ!」

「どっちにしろ、こいつの能力もチート級だ!しかも裏切り者だぞ?!」

「う、裏切り者にこんな能力もたせてたらダメよ!みんな殺されるッ!」

「そうだッ!今のうちに殺しておかないとッ!死ぬのは俺たちだッ、あ、あんなふうにっ!」

「死ねッ!!お前は生きてちゃダメだッ!」

「殺せッ!殺せッ!!」


 恐慌はすぐに広がった。あっという間だった。


「い、いやあっ!私は、私はただ!」


 20人近くの参加者が、キョウコを追い詰めていく。そして誰かが、指さして言った。


「『能力指摘』だ!京橋キョウコ、お前が『カウンター』だッ!!」


 ピンポーン!と、また安っぽい正解音が鳴る。次の瞬間、キョウコの頭が弾け飛んだ。『異能力』を指摘されると、死ぬ。それもまた、参加者たちの前でしっかりと示された。


「ううう”っ……やだよぉ……なんでこんなことに……帰りたいよぉ……」

 泣きながら僕の足にすがるマイカの背を撫でてやる。ミラはうずくまったままだ。僕はつとめて冷静に振る舞った。本当はおかしくなりそうだったけど、そんな態度をとっていないと、バレるからだ。

(さっきのクイズ……明らかに、僕は答えられないはずの段階で答えられていた。絶対にバレちゃいけない、絶対に!)


 他の参加者たちの恐慌から背を向け、僕は精一杯、友人を慰めるのに精一杯なふりをする。


「Cでこんだけチートなんだ、やっぱり『アンサー』は生かしておけねえ!」

「『アンサー』を探せ!」

「探し出して殺せ!」


 日常では絶対に感じることのない量の殺意が、『アンサー』に向いている。頭がおかしくなりそうだった。


「A、あたし、ダメかもしれない……」

 うずくまっていたミラがよろよろと立ち上がり、バランスを崩した。僕はなんとかそれを受け止め、ミラが僕に抱きつく形になる。

 普段からぶっきらぼうで気が強く、芯の強い性格のミラでも、さすがにこたえたらしい。だぼっとしたパーカーの中の、細い体を腕の中に感じる。


「……『アンサー』ってさ」


 血の気が引いた。


「A、あんただよな?」


 僕から、ミラの顔は見えない。

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