Q1 紙のサイズ、電流の単位、トランプの1の札に共通するアルファベットは何? 2

 目が覚めたとき、僕は自分が全く知らない場所にいることに気がついた。

 どこまでが床でどこからが壁かもわからない、真っ白な空間に、二十数人ほどの人がいる。同じように目を覚ましたらしい。

「あ、起きた」

 よく知る声が頭上から聞こえて、僕は顔を上げた。

「ミラ……これって、一体」

「なんもわからん。何人かに話したけど、みんなそうみたい」

 ミラはピンク色のショートヘアを指でいじりながら答える。周囲を見渡すと、みんな不安げだったり、イラついているようだった。僕は体を起こす。

 なにかおかしなことになっている。正直僕は不安でいっぱいだったが、好きな女の子の手前、平静を装った。

「……とりあえず、ミラがいてよかった。他に知ってる人はいた?」

「いたけど」

 ミラは蛍光色のパーカーの裾をつかみながら、言葉を濁した。その理由はすぐにわかった。

「あ、Aさん!Aさんも巻き込まれてたんですね!」

 フリフリの服を着た小柄な女の子が、ミラの後ろから顔を出した。たしかゴスロリとかいうヤツだったと思う。

「よかった、仲間がいて!こういうのは仲間がいたほうが絶対有利だから!」

「えっと……」

 相手は僕のことを知っているようだが、僕にはこんな服を着るような友人はいない。声には少し聞き覚えがあったが……。

「……みぎわだよ。同じクラスの。いただろ、後ろの方で喋ってるオタク連中の」

「あ、ああ」

 そう言われて初めて思い出した。汀マイカ。あまり目立つ方ではなく、僕とも、ましてやミラともあまり接点がなかった。

「そうです、みぎわマイカです!マイカって呼んでください」

 マイカは周囲の他の人間と違い、やけにテンションが高かった。

「よ、よろしく」

「はい!」

 マイカが僕の手をとり、ぶんぶん振った。学校でのおとなしい様子とはずいぶん違う。

「……つーか、ずいぶん慣れなれしいのな。芦田のことAって呼んだり」

「え?御巫みかなぎさんも呼んでたじゃないですか」

「はぁ……ま、Aがいいならいいけど」

 ミラは僕(芦田エイ)のことをAと呼ぶ。まあ、発音の違いぐらいだから、誰がそう呼んでも、どうということはないのだけど。ともかく、ミラが紹介をためらった理由はなんとなくわかった。

「で、マイカは、その。なんでそんなに楽しそうなの?ここがどこか知ってる?」

「いや、知らないですけど。でもテンションあがらないですか?だってこれ絶対デスゲームものの導入ですよ。見たことないですか?マンガとかアニメとかで」

 なるほど、好きな作品とシチュエーションが似てるから盛り上がってるのか。

「あまり詳しくなくて。デスってのは穏やかじゃないけど……」

「きっとこのあと、謎の主催者が出てきて、『君たちにはゲームに参加してもらう』的なやつですよ!あ、もちろん私、現実と創作の区別はついてますから。あくまでそういうテイの企画かなにかだと思いますけど」

 早口だ。ミラがイラついていたのは、これにつきあわされていたからかもしれない。そんなことを考えていると、すぐ前でどよめきが起こった。

「あ、ほら!」

「うわ、マジかよ」

 マイカが小刻みにはねながら指さした先。扉のようなもの(そんなのあったか?)が開き、中からなにかが現れた。

「なんだあいつ。ロボか?」

 ミラがつぶやく。ここからだと少し遠いが、CGのアンドロイドのような外見の……おそらく女性だ。


「おい、お前なんなんだよ!」

 出現した場所に近かった男が、アンドロイド女に近づいていく。大柄で筋肉質な男だ。

「これお前がやったのか?おい、テメエ、なんとかッ」

 今にも男がつかみかかろうとしたとき。アンドロイド女は、銀色の唇を開く。


「            」


 何重にも重なった機械音のような声。それが耳に入った瞬間。

「っづあ!!!!」

 僕は頭を抱えて倒れる。ミラもマイカも、周りの人全員がそうしているのがかろうじて見える。しかし、何も考える余裕がない。

(なんだ、これっ…!!なんで『分かる』んだ?!)

 頭が爆発しそうになる。脳が強制的に、音声の意味を分からされていく。脳が悲鳴を上げる。

【我々はオラクル。このメッセージは超高圧縮言語プロトコルにより、有機生命の脳に直接情報を送信するものです。あなたがた人類の脳には少し負担かもしれませんが、テストの効率化のため、ご協力ください】


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