密林を出でし緑の巨人吼ゆ
最悪の原発事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所の近辺は人間の手が入らなくなったエリアが動植物の楽園になっているという。
人間が自然にどれだけ手を加えようが、森を焼き払って開拓しようが何千何万の生物種を絶滅させようが、人間が存在しなくなれば自然は速やかに逆襲を開始する。人間がいなくなったり、手を出さなくなったエリアに向かって自然は我が物顔にどんどん進出していくだろう。
先月の日本への一時帰国の際、実家で遭遇した雑草は石垣で木質化しつつあったし、荒れ放題の隣の家は屋根の上にまで雑草が生えていた。人間が何も手をつけず放っておけば、温帯のわたしの故郷もゆっくり時間をかけて植物で覆われて、自然に再吸収されてしまうのに違いない。
だが、熱帯雨林気候の土地ではそうはならない。
水と強い日光に恵まれた熱帯の植物の旺盛な繁殖力は半端ではない。おだやかな温帯の植物相よりもはるかに凶暴だ。だから、ゆっくりとではなくて急速に人間の作った田畑や街を侵略して飲み尽くすだろう。
わたしが今暮らしている熱帯の小田舎、その近所の橋のたもとは管理する人がいないのか、サボっているのかはわからないが、そこで立っている電柱や電線がすっかり熱帯の蔓植物に覆われてしまった。その姿はジャングルから現れた緑の巨人が大きく両手を広げて何かを叫んでいるように見える。まるで人間を追い払うかのように。
問題はこの緑の巨人が我が家がある集落の電線の上流であることだ。この緑の巨人の中を通して、家の集落に電気が供給されている。ここの電柱も電線も現役で使われているのだ。これってやばくないか?
いまでも既に感電や漏電のリスクがあるのじゃないか? だったらうかつには手を出せない。そして、このままどんどん成長すればどうなる? 嵐が来たら風を受けて電線が切れたり電柱が倒れるんじゃないか?
だが、同じ集落の人はいたって呑気だ。それとも言い出しっぺになってババを引くのがイヤだから気にしないようにしているのか?
所詮草だと甘く見ているのかもしれないが、何もしないで放っておけば、気にしなくとも、「木」になってもっと大変ではとわたしは思う。
<(_ _)>
緑の巨人の写真はこちらの近況ノートに。
https://kakuyomu.jp/users/TokiYorinori/news/16817330660538439877
追記 その後の断末魔の巨人がゴースト化して叫ぶ様子はこちらの近況ノートに! ちょっとグロいな。
https://kakuyomu.jp/users/TokiYorinori/news/16817330662699503232
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