熱帯の 辞書にはないぞ 冷房病

熱帯の 辞書にはないぞ 冷房病


 クーラーの効きすぎによる自律神経失調の冷房病という概念は熱帯の国々にはない。それどころか、他の多くの国々で冷房病と言う概念はなさそうだ。嘘だと思うなら、あのウィキペディアで冷房病について調べてみると良い。冷房病の項目が存在する言語は日本語と韓国語のみである。


 冷房病の予防には外気温と湿度の差が5℃以内が望ましい。だが、気温が体温を超えたり、ときとして40℃にもなる熱帯で、誰がそんな設定温度で汗をダラダラと流したいと思うだろうか。


 ということで、今いる国に限らず、東南アジアのオフィスやバスの中といった公共の場では、冷房があれば普通はガンガン目一杯効かせまくる。もはや冷房じゃなくて冷蔵じゃないのか。


「仕方がないでしょう。寒かったら服を増やせばいいけれど、暑いからといって、人前で服を脱げないじゃない。特に女性は!」


 とは現地の人の意見だ。なるほど。涼しさのサービスの提供は、暑がりのご婦人を基準にしているようだ。


 わたしも冷房付きのオフィスで仕事するようになった当初はしょっちゅう風邪をひいた。その原因の一端は間違いなく冷房にある。


 地元の人はそんな過剰な冷房にどう対策をしているか。なんのことはない。ガンガン冷房が効いた職場では、制服の上からカーディガンやベストやジャンパーを来たり、お客さまが来ないようなオフィスならばブランケットにくるまったりと、ちゃんと暖かい服装をして仕事をしているのだ。外は30度を超えるのにそれもなんだかなぁ。


 そんなわたしに強力な味方が現れた。実家から送られたユニク⬜︎のヒート▽ックだ。これさえ着れば過酷な冷房にも耐えることができる。以前ほど風邪をひかなくなった。もはや手放せない。


 新型コロナ流行前の2019年、わたしは日本に一時帰国した。わたしには自分へのお土産としてどうしても欲しいものがあった。そう、ユニク⬜︎のヒート▽ックだ。私はユニク⬜︎を訪れ、ヒート▽ックを求めた。ところが店のスタッフはそれは売れないと言う。彼は痛ましいものを見るようにわたしに向かって言った。


「お客さま、今は6月でございます。冬物商品であるヒート▽ックは、この時期お取り扱いしておりません」


 が〜ん! 一年中ヒート▽ックを着ているワタシは、それが冬物商品であることをそのとき初めて理解したのだった。残念。


寒いなら 夏でも着よう ヒート▽ック

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