熱帯では ただの魚だ 熱帯魚

熱帯では ただの魚だ 熱帯魚


 親戚が鑑賞用の魚を買ってくるという。わたしは魚の名前は全然詳しくないが、一応聞いてみた。


「大きい魚かい? アロワナみたいな」


 わたしは某所で見た大きな水槽なのに窮屈そうにウロウロしているザ・熱帯魚みたいな白い魚を思い浮かべた。


「違うよ。もっともっと小さいけどキレイな魚」


「こっちの言葉じゃわかんないけど、英語だとグッピーとかネオンテトラかな。世話が大変そうだねえ」


「なんで?」


「だって水槽買って、空気を水に入れる機械やら、ヒーターやら温度計やら」


「ヒーターに温度計? ちょっと待て。食べるんじゃないぞ!」


「ええ? でもグッピーとかだと水温管理が大変じゃあ?」


「どうして? それに水槽も要らないし、空気のポンプも要らないよ!」


「じゃあ、どこで飼うんだい?」


「ウチの前に大きな水がめがあるじゃないか。あそこだよ。他に要るのは水草だけだな」


「そんなぞんざいなって、ああ! そうか!」


 熱帯魚にとって熱帯ってアウェイじゃなくてホームなんだ。そして、熱帯の人にとって熱帯魚って特別な魚じゃない。ただの魚、ノーマルぎょなんだと。わたしたちも、フナや金魚をわざわざ魚などとは言わない。魚の話題だけに目から鱗が落ちた気がする。


 こうして、親戚によってキラキラ光るネオンテトラっぽい熱帯魚が、ウチの前にある水がめに放された。蓮🪷もオマケでつけてだ。普通に水道水をそのまま入れていたけど大丈夫っぽい。さすが南国。



 ある暑〜い日のこと。娘がべそをかきながらやってきた。


「パパ、たいへん。犬がウチの前のお魚を食べてるの!」


「ええ? 犬って生魚を食べたっけ?」


 半信半疑で見に行けば、近所の放し飼いのワンコが水がめに前足をかけて・・・・・・ピチャピチャと水を飲んでいた。熱帯の昼間は暑いからね。でも、そこから飲むのかい、キミは。


「大丈夫。水を飲んでいるだけだから」


 あれは魚を食べているように見えないこともない。1匹2匹間抜けな魚が飲み込まれている可能性はあるけどまだちゃんと残っているから大丈夫。大人しい仲良しのワンコだったので罪は問わないことにした。


ワルいのは ワンコじゃなくて 暑


m(_ _)m

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